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学童保育、不安消す心得 ベテラン指導員に聞く
学童保育、不安消す心得 ベテラン指導員に聞く
入学シーズンがやってきた。新しい環境になじめるのか、本人だけでなく親も気になるところ。
働く女性が増えて、低学年では2割の児童の利用する学童保育所でも、多くの親にとって未知の
世界だけに、不安が強いようだ。ベテランの指導員に、4月を乗り切るこつを聞いた。
埼玉県草加市立長栄小学校の一角にある「長栄アトム児童クラブ」。この春、7人の新1年生を迎えた。
最初の1週間、公園への移動や食事の際、2人組の上級生が交代で面倒をみる。初日の2日に開いた歓迎会
では、上級生が手作りした遊び道具をプレゼント。散歩遠足などを通じ、親睦を深めていく。
「異年齢の集団に入るのは初めての子が多い。緊張しているので、徐々になじむよう気を配ります」と、
指導員歴33年の山本博美さん(全国学童保育連絡協議会前会長)は説明する。
初めての体験なら、戸惑うのが当たり前だ。学童保育の教室に入れなかったり、親の迎えが遅いことで
不安になったり。ようやく慣れたと思っても、突然「行きたくない」とぐずり出すことも珍しくない。
「保護者は『不登校』の前兆かと焦るが、4月を過ぎると変わる。ゆっくり、最低1カ月は様子をみて」と山本さん。
この時期の保護者は、子ども以上に神経質になりがちという。学童は未知の世界という親が多いだけに、
ちょっとした子どものけんか話にも過敏な反応を見せることがある。
同クラブでは、通常は週1回発行の通信を4月は隔日で出し、様子を小まめに伝えるようにしている。
「知らないことが不安につながる」という考えからだ。時間が許せば、30分程前に迎えに行き、自分
の目で様子を確認することも、不安解消になるはずだ。
山本さんは、多忙で余裕がないためか、気持ちを表さない保護者が増えてきたと感じている。少しで
も疑問があれば、連絡帳に書いたり電話をしたり、指導員に直接尋ねて欲しい。
「子どもにとっても、親と指導員のつながりが、学童への安心感につながる。自分の子だけでなく、
全員の子の成長を見守るくらいの気持ちでいてもらえたら」
◆希望しても入れぬ子1000人超
県内の学童保育所(放課後児童クラブ)数は年々増えている。
厚生労働省の調査では、昨年5月1日現在で1052カ所と1千カ所を超え、4万6599人が利用。
これは全児童の約12%にあたり、利用が多い低学年では20%に達する。入所を希望したが入れなか
った子どもは、2008年の約1400人をピークに減少傾向だが、昨年も1016人。需要に追いつ
かない状況だ。
県学童保育連絡協議会の森川鉄雄事務局次長は「子どもの数は減少傾向だが、女性の社会進出で利用
者は増えている」と話す。
学童保育の設置基準や職員数は法律による規定がない。県はガイドラインで子どもの数が40人まで
を適正規模とし、41人以上は複数に分けることが望ましいとするが、「70人前後の大規模学童もある」(森川次長)。
大人数になると職員の目が行き届きにくくなり、子どももストレスをためがちだ。
県は今年度、20カ所を新増設する予算を組んだ。森川次長は「希望しても入所できない子どもが1千人を
超える以上、まだ足りない状態」としている。(帯金真弓)
2012年4月9日14時33分 朝日新聞デジタル