保育ニュース
学校のアレルギー対応 調理実習でも誤食防ごう
2013年5月2日|中日新聞(CHUNICHI Web)
食物アレルギーの子どもたちが増える中、保育所や小学校では、調理実習など給食以外の場面でも誤食などの事故が起きている。事故を防ぐために、現場では誰もが食べられるメニューを考えたり、代替の食材を使うなどの工夫をしている。(稲熊美樹)
乳アレルギーの小学生の母は、サツマイモを使った「鬼まんじゅう」を作る実習があると学校から連絡を受け、「鬼まんじゅうなら牛乳は使わないだろう」と考えた。しかし、実習で作ったのは小麦粉や牛乳を使った蒸しパンだった。子どもは牛乳を触るだけでも症状が出てしまう。実習中に子ども自身が不安になり、芋を少しだけ食べて残りを自宅に持ち帰った。
母は「みんながおいしく食べている中、一人、食べずに我慢していた」と打ち明ける。担任らはアレルギーを理解し、対応しようとする姿勢だっただけに、「材料を確認すればよかった」と悔やんでいる。
学校と家庭との連携は、事故を防ぐために欠かせない。大阪府高槻市の小学校教員、長谷川洋子さんは、アレルギーの子の保護者には、必ず事前に材料を知らせる。メニューも工夫し、できるだけ誰もが食べられるものにする。もしアレルギーの子が食べられない材料を使う場合は、その子が食べられる、代わりの材料を持参してもらって対応している。
名古屋市の小学校教員で、雑誌「おそい・はやい・ひくい・たかい」(ジャパンマシニスト社)などの編集者、岡崎勝さんは「『食べられなくてかわいそう』ではなく、個人差があるとか、改善に向けて頑張っていることをほかの子どもたちに伝えることが大事」と指摘。保護者に確認した上で代替食材を使ったり、卵焼きの代わりに、お好み焼きを作るなどして対応する。
◇
食物アレルギーの子どもたちも通う名古屋市のめいほく保育園では、小さい子どもたちも保育の一環で頻繁に「クッキング」をしているが、メニューは誰もが食べられるものにするのが原則。食物アレルギーは、食べるだけでなく、触るだけでも症状を引き起こすことがある。また、「子どもたちの気持ちを考えると、同じ物を作り、同じ物を食べられるのがいいから」だ。
四月下旬のある日、二、三歳の子どもたちが取り組んだのは、エンドウマメのさやから豆を取り出す作業。豆は、この日の昼食の「豆ご飯」になった。
同園では、在園児のアレルギーに応じてクッキングの内容を決める。ヨモギ団子やイチゴジャム、きのこ汁などは三大アレルゲンとされる卵、小麦、乳を使わない。
また、小麦アレルギーの子どもがいないときは、乳製品のバターの代わりに菜種マーガリンを使えば、パンケーキも作れる。
◆指導要領に記述なし 教員の裁量に委ねる
文部科学省によると、小学五、六年生の家庭科の調理実習に関する学習指導要領には、食物アレルギー対応に関する記述はない。実習で「ご飯とみそ汁」を作ることが定められているだけで、他に何を作るかは各教員の裁量に任されている。
各社の教科書で紹介されている実習のメニューは、ゆで卵やいり卵、ポテトサラダなど、卵や牛乳などが含まれているものも多い。
同省によると、家庭科の教員養成課程でもアレルギー対応を学ぶことは義務付けられていない。教育委員会による研修や、教員の自主的な情報収集などに委ねられているという。
東京学芸大など一部の大学では、食物アレルギーへの対応が課題となっている現状を踏まえ、教授の裁量で指導。同大では「アレルギーは命に関わることで、最優先して考えるべきこと」と、学生たちに認識を深めてもらっている。
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2013050202000146.html