保育ニュース
深刻な人材不足。新たな対策、どう変わる?
2013年4月23日| 読売新聞
待遇改善や再就職支援
保育士は、保育所などで就学前の乳幼児を保育するのが仕事だ。保育所で行う保育の内容は、厚生労働大臣が告示する「保育所保育指針」で定められていて、教育も行う。
ところが、保育所の利用希望者が増えるなか、保育士の不足が深刻になっている。厚労省が2011年度に、待機児童の多い自治体に行った調査では、回答した130自治体の76%が「保育士が不足している」と答えた。
このため、厚労省は今年度、総額438億円をかけて様々な対策に着手する。目玉は、私立保育所で働く保育士の賃金アップを図るための補助金で、340億円を投入する。
ほかの職種に比べて待遇が悪いことが、離職者の増加を招き、保育士不足になっていると指摘されているからだ。昨年の賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均月額給与は21・4万円で、全職種平均の32・6万円と比べて10万円以上も少なかった。
幼稚園教諭の22・5万円よりも下回ったが、幼稚園が原則1日4時間の保育なのに対し、保育所は8時間保育が基本で、夏休みなどの長期休暇はない。幼稚園教諭に制度化されている法定研修もない。
厚労省の試算では、今回の補助金で、標準的ケースなら月収約30万円の保育士は月約8000円の賃金増、月収約35万円の主任保育士なら月約1万円増になるという。
保育士の資格があるのにほかの仕事についていたり、結婚や出産を機に辞めたりした「潜在保育士」は、全国で約60万人と推計されている。潜在保育士の活用を進めるため、今回、都道府県社会福祉協議会などに「保育士・保育所支援センター」を設置する。専門の担当者が再就職の相談や再就職先のあっせんを行う。
また、保育士資格を持たずに認可外保育所などで働く人が資格を取得できるよう通信制講座の受講料を補助する。保育士養成校で学ぶ人への修学資金の貸し付けや、保育士の研修の充実も実施する。
保育士が長く働き続けて、経験を蓄積できれば、保育の質の向上にもつながる。15年度から始まる保育の新制度でも、保育士の支援策を本格的に検討することが必要だ。(樋口郁子)
(2013年4月23日 読売新聞)
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