応答的保育って何?【重要性・効果・取り入れ方・注意点】

応答的環境や応答的保育という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。子供たちの成長に近くで寄り添う保育において、注目され重視されているのが応答的保育です。ここでは、応答的保育がどのようなものであるのか、そのメリットや取り入れる際のポイント、注意点をまとめてみました。ぜひ、子供たちの成長をよりよいものにするために、保育の場面に活かしてみてくださいね。

応答的環境と応答的保育の意味

応答的環境:子供と大人で相互的な応答により作られる環境

応答的環境とは、子供が話しかけてきたことに対して、大人が子供に寄り添って応えること。もしくは、子供に対して優しく問いかけをし、その問いかけに対する子供の反応を受け止めること。このように、子供と大人で相互的な応答によってコミュニケーションをとることです。相互的なコミュニケーションをとることで、子供たちは親からの愛情を感じることができます。そのため、相互的な応答は、乳幼児期においてだけではなく、小中高生になっても重要なことであると言えるでしょう。

応答的保育:応答的環境を取り入れた保育

応答的保育とは、先程説明した応答的環境を取り入れた保育のことです。応答的保育では、基本的に保育士側から子供への声がけや言葉がけが重要になります。この相互的で応答的な子供との関わり方の重要性は、保育所保育士指針やこども園教育保育要領に書かれています。保育士自身が応答的保育についての理解を深めることで、乳幼児期の子供たちの成長や発達を促すサポートをすることができますよ。

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応答的保育を行う際の前提条件

物的環境を整える

応答的保育を行う際の前提条件として、物的環境が整っているかどうかが重要です。例えば、教室に遊ぶ道具がつみきしかなければ、飽きてしまった子供たちは保育士の周りに集まってきますよね。そうすると、子供たち全員に目を向けることや話を聞くことは難しくなり、全員と関わることはできなくなってしまいます。しかし、遊び道具や興味を引くものがたくさんあれば、子供たちが保育士の周りに集まってくることは無くなりますよね。対話とは、子供と大人という人間同士だけでなく、道具や自然物という人とモノの間でも成立するのです。そして応答的保育では、この人とモノの間の対話も重要になりますよ。

主体的な遊びができる環境をつくる

応答的保育を行う際の前提条件として、子供たちが主体的な遊びができる環境づくりが挙げられます。保育園では基本的にクラスが設けられ、そのクラスでは複数の子供を保育しますよね。このとき、◯分間〇〇遊びをして次は〇〇をするという方法をとっていたらどうでしょうか。子供たちの〇〇をしたい!という主体性を無視していることになりますよね。さらに、保育士は時間を気にしたり、次の指示を考えたりと子供たち一人ひとりと関わる時間は十分には取れないでしょう。しかし、子供たちが好きな遊びができ、主体的に行動できる環境であれば、保育士は子供たち一人ひとりに目を向けることができますよね。

応答的保育の重要性

言葉への興味を湧かせる

応答的保育が重要視される理由は、子供たちに言葉への興味を湧かせることができるからです。応答的保育を行うことで、子供たちが自分の気持ちや、やりたいことを表現することができるようになります。さらに、周りの人とコミュニケーションをとることに楽しさや喜びを見出すことができるようになります。親や保育士、周りの人からの声がけ、言葉がけを通して子供たちは言葉を学びますよね。そのため、応答的保育を通して、子供たちは言葉に興味を持ち、学ぶことができますよ。

子供の人格形成に関わる

応答的保育が重要視される理由としてもう1つ挙げられるのが、子供の人格形成に関わるということ。自分の言いたいことや、やりたいことを言える、そしてそれに応えてくれる大人がいる環境で育ったかどうかは、子供の人格形成に大きく影響を与えます。自分の言ったことに対してきちんと応えてもらえずに育った子供は、自分の意見を主張することに対して抵抗感を持つようになったり、言われたことをただやるという受動的な人になってしまいます。一方、応答的環境で育った子供は、主体性を持って発言や行動をするようになる、人の意見を聞ける人になりますよ。

応答的保育の効果

子供の自己肯定感が上がる

応答的保育による効果として、子供の自己肯定感の向上が期待できます。応答的保育では、子供たちの主体性と子供たちとの対話を大切にします。自分の言ったことに対して、親や保育士がきちんと応答してくれる環境では子供たちにとって自分を認めてくれるという喜びを感じられるようになります。そうして親や保育士とコミュニケーションをとることで、子供たちは愛情を感じ、心が満たされ、自己肯定感を持って成長することができるようになりますよ。

愛着の形成

愛着が形成されることは、応答的保育による効果の1つ。愛着の形成は、乳幼児期における心の発達と人に対して信頼することにおいて重要な役割を持ちます。そして、愛着を形成することがその後の対人能力の基盤を形成することにつながります。自分が発したことについて応答的に対応してもらうことで、子供たちはその人からの愛情を受け取ることができますよね。だからこそ、応答的環境で育つことによって愛着が形成されるのです。

コミュニケーションの基礎の形成

応答的保育を行うことで期待できる3つ目の効果として、コミュニケーション能力の基盤形成が挙げられます。前述のように、応答的保育では、子供たちの主体的な発言が尊重されますよね。そして相手がそれに真剣に応えてくれることを通して、子供たちはコミュニケーションの取り方を学ぶことができます。もし、自分の話していることに反応をしてくれる大人がいなければ、人とどのようにコミュニケーションを取れば良いのかわからなくなってしまいますよね。だからこそ、応答的保育はコミュニケーション能力の基盤形成につながるのです。

応答的保育の例

苦手なものを克服した例

ここで、応答的保育によって苦手なものを克服したA君の場合を例として見ていきましょう。ある日外遊びをしているとき、A君はブランコを見て後退りをしていました。保育士の1人がその様子をみて、「乗ったことある?楽しいよ?」と声をかけたところ、砂場の方に行ってしまいました。このとき、声をかけた保育士は、A君の「乗りたくない」という気持ちを受け取り無理強いはしませんでした。後日、再度外遊びに行ったとき、A君がブランコの近くに立ち、ブランコをみていました。そこで保育士が「乗ってみる?」と声をかけたところ、A君はブランコに腰掛けたのです。少し押してあげると、A君は笑顔でブランコに乗っていました。これは、自分の気持ちに寄り添ってくれる安心できる保育士が近くにいたからこそ、A君はブランコに乗れるようになったのでしょう。

保育に取り入れる際の4つのポイント

子供の声に耳を傾ける

応答的保育を行うときに重要なポイントは、子供の声にきちんと耳を傾けること。子供たちは、自分の言葉に対して周囲の大人が応えてくれることによって愛情を感じ取ったり、自己肯定感を得たりすることができます。まだ流暢に言葉を話すことができない乳幼児期の子供たちも、声を発しているときは何かを伝えようとしているとき。子供たちが何を言おうとしているのか、何を周囲に伝えたいのかを汲み取り、子供たちの声に応えてあげましょう。

子供と同じ目線に立つ

応答的保育を取り入れる際の重要なポイント2つ目は、子供と同じ目線に立つこと。時には、子供たちが興味を示すことが不可解なこともありますよね。そのような時でも、子供たちからの発信には子供たちと同じ目線に立って応えてあげましょう。子供は大人の想像を超えてくるものです。だからこそ、子供がやっていることに対して、同じ目線で言葉がけをすることで、子供たちは自己肯定感を得ることができます。

子供の思いに共感する

応答的保育を行うときの重要なポイント3つ目は、子供の思いに共感すること。応答的保育とは、子供たちを全肯定するということではありません。時には、危険を伴うなどの理由からよくないことだと教えなければならないときもありますよね。その時に大切なのが、まず子供の行動や思いに寄り添い共感するということ。なぜ子供がそのような言動や行動を取ったのかを汲み取り、その上で良い方向に促すことが必要です。

子供の発達に合わせた言葉がけをする

応答的保育を取り入れる際の重要なポイントの4つ目は、子供の発達に合わせた言葉がけをすること。応答的保育の核は対話ですよね。しかし乳幼児、特に0〜2歳の頃は目の前の興味のあるものに集中してしまいます。そして実際に触ってみたり観察したりすることによって学んでいきます。そのため、ここで周囲が行うべきことは無理に話しかけたりするのではなく、子供たちの体験をサポートできるような言葉がけ。対話は対人だけでなく、対モノでも成立するのです。

保育に取り入れる際の注意点

脅すような言葉を使わない

応答的保育において、子供たちを脅すような言葉を使うことはNG。脅し言葉を使うと、子供たちはその言葉に従ってくれるでしょう。しかし、それは大人に怯えて従っているだけで、対話ができているわけではないですよね。脅し言葉ばかりを使うと、子供たちはその人だけでなく大人全体への信頼を無くします。そのため、応答的保育では良くないことにはきちんと理由をつけて、子供たちとの対話を大切にするのです。

否定的な言葉を使わない

応答的保育において、否定的な言葉は使ってはいけません。否定的な言葉を言われると、子供たちは心理的虐待に近い気持ちを抱きます。それほど強く言ったつもりではなくても、大人に否定的なことを言われると子供たちは心に傷を負ってしまいますよ。積み重なると、子供は自己肯定感を失ったり、大人を信頼することができなくなってしまいますよね。だからこそ、否定的な言葉がけではなく、ポジティブな言葉がけを意識しましょう。

強制的な言葉を使わない

応答的保育において、強制的な言葉は使わないようにしましょう。物事を強制するような言葉がけは、子供たちにストレスを感じさせます。さらに自分の考えが間違っているのではないかと感じ、自己肯定感が下がることにも。そのため、「こうしなさい」というような言葉がけではなく、子供たちが自分で意思決定できるような言葉がけをしましょう。そのサポートが、子供たちの主体性を育むことにもつながりますよ。

まとめ

応答的保育を取り入れて、子供たちの主体的な学びをサポートしましょう!

いかがでしたでしょうか。応答的保育は、子供の成長においてとても重要な役割を果たしていますよね。子供たちが将来どのような大人になるのかの基盤は、幼い間の経験や環境に左右されます。だからこそ、応答的保育を通して周囲の人からの愛情を受け取って成長していくことが大事ですよね。また、応答的保育では子供たちの自己決定を促し主体性を育むことができます。メリットの多い応答的保育を取り入れて、子供たちの成長をサポートしていきましょう。

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