保育園の虐待はなぜ起こる?【不適切保育・虐待事例・防止するには】

近年、保育園での虐待に関するニュースが相次いでいます。子供を守るはずの保育園でなぜこのような悲しい事件が起きてしまったのでしょうか。ここでは、実際にあった保育園での虐待事例、その原因、防止法や虐待が起きてしまった時の対処法を見ていきましょう。この記事を読むことで、子供たちが楽しく通園でき、また、現場で働く保育士さんが安心して活動できるような環境ができるよう願っております。

保育園内の虐待による不適切保育とは

身体的虐待

身体的虐待として挙げられる例は以下の通りです。

・子供を叱る際に殴る、蹴る、たたく、強く引っ張るなどの暴力をふるう
・子供が言うことを聞かないからと部屋に閉じ込める
・暴れている子供を身動きが取れなくなるくらい拘束する
・ご飯を子供の口に押し込む
・子供の体を激しくゆする

大人と子供では圧倒的な力の差があります。上記にあるような、暴力で子供に反省させるようなことはよくありません。

心理的虐待

心理的虐待として挙げられる例は以下の通りです。

・子供によって優しくしたり、厳しくしたりと差別的な扱いをする
・子供の失敗を執拗に責めたり、「そんなこともできないの」などの人格を否定する言動をする
・子供に対し「ばか」「あほ」などの暴言をはく
・子供を叱る際に激しく怒鳴る
・子供の身体的特徴や苦手なことなどをからかう

上記のような心理的虐待は身体に傷を受けた場合と違い、目には見えません。しかし、保育士にとっては軽く行ってしまった言動でも子供の心には深く傷が残る場合があります。子供と関わる際には自分の言動が適切なのかどうか一度考えてみましょう。

ネグレクト

ネグレクトとして挙げられる例は以下の通りです。

・子供がお漏らしてしまった際に世話をせずに放置する
・子供にご飯やおやつを与えない
・子供を外に出したまま放置する
・部屋を掃除せず、汚いところで過ごさせる

最近よくニュースで報道されている、送迎バスで子供がまだ中にいるにも関わらず、放置したまま閉じ込めるというのもネグレクトにあてはまります。ネグレクトは子供に大きな不安を与えます。子供に対し無関心になったりせず、子供の様子を注意深く見ましょう。

性的虐待

性的虐待として挙げられる例は以下の通りです。

・特に必要のない場面で子供を裸にさせ、写真を撮るなどする
・性的に子供の体を触るなどのわいせつ行為をする
・保育士の性器を子供に見せたり、触らせたりする

性的虐待は異性に対して行われると思われがちですが、このような事件は男女関係なくあります。できるだけ保育士と子供が二人きりになる場面を作らないようにしましょう。

保育士くらぶ

保育園内での虐待事例

静岡県の認可保育園

静岡県にある認可保育園で保育士による虐待事件が発覚しました。実際に合った虐待行為は以下の通りです。

・園児の足を持って逆さづり
・園児を排泄室に閉じ込め放置する
・昼食時に怒鳴りつける
・カッターナイフで脅す
・容姿をばかにした発言をする
・寝ている園児に対し「ご臨終です」発言をする
・ロッカーで泣いている園児を携帯で撮影する
・園児の頭をたたく
・手足口病の症状がある園児のお尻をほかの園児に触らせる

同僚の保育士が上司に上記の虐待行為を報告したところ、園は対応せず市にも報告しませんでした。さらには、園は保育士に誓約書を書かせ、事件を隠ぺいしようとしました。(参考:東京新聞)上司に報告しても園が対応しない場合は児童相談所に通報しましょう。この際に動画や録音など証拠を用意しておきましょう。

富山県の私立認定こども園

富山県の私立認定こども園で保育士による虐待事件が発覚しました。実際に合った虐待行為は以下の通りです。

・園児の腕をつかんで引きずる
・園児の頭を押さえつけ、飲み物が入ったコップを口に近づける
・お昼寝の時に一人の園児だけ布団を敷かず放置する
・園児が遊んでいるときに保育士が寝そべっている
・園児を布団で挟みロープで巻く
・園児を倉庫に閉じ込める
・お尻を棒で突く
・椅子をひいて園児にしりもちをつかせる

園内にはカメラが設置されており、当時の虐待行為の映像も残されていました。虐待を行った保育士は、「しつけのつもりだった」と供述し、園長は「暴行ではない」と判断したそうです。(参考:情報ライブ ミヤネ屋)保育士は「しつけのつもり」と話していますが、上記の行為は明らかに暴力行為とわかります。先ほど書いた身体的虐待にあてはまります。保育では自分の行っていることがしつけなのかどうかを常に振り返ってみてください。

千葉県の小規模保育事業所

千葉県の小規模保育事業所で不適切保育が行われていたと市が行政指導を行いました。保育士3人が不適切保育をしていたということです。実際にあった不適切行為は以下の通りです。

・給食時にうとうとしていた園児の頭をたたく
・お昼寝をしていた園児を足でどかす
・泣いている園児をトイレに5分間放置する
・園児の頭を弁当容器でたたく
・指で7度にわたり園児のこめかみを小突く

今回の上記のような行為は元保育士の匿名の通報から発覚したということです。(参考:千葉日報)この事例のように虐待行為は複数人でしていることが多いです。その場の雰囲気で周りに流されて自分も一緒にやってしまうというのは、絶対にしてはいけません。実際に目撃した時に注意できなくても、上司に報告するなどしましょう。

なぜ保育園で虐待が起こるのか

「虐待」か「しつけ」かの曖昧さ

保育園で虐待が起こることの原因の一つに虐待としつけの境目が曖昧になってしまっているということがあります。しかし、しつけと称して子供を力で脅したり暴言を浴びせたりするというのは、子供の人格形成の段階において悪影響を及ぼします。また、このことがきっかけで子供がPTSD(心的外傷後ストレス障害)になってしまうかもしれません。保育所保育指針というものを知っているでしょうか。保育所保育指針というのは、国が保育において基本となる考え方や保育内容をまとめたものです。保育活動で子供との関わりで悩んだ時に一度目を通してみると何か得られるものがあるかもしれません。また、もし保育において子供に手を出しそうなったり、暴言を吐きそうになったときには、保護者の前でもそういった行為ができるのかということを一旦考えてみるといいかもしれません。

保育士不足による業務負担

もう一つの保育園で虐待が起きる原因は保育士不足による業務負担の多さです。厚生労働省の資料を見ると、平成25年度は9割の都道府県が保育士不足の問題を抱えているというデータが出ています。保育士不足が起こる原因には主に以下の理由があります。

・責任の重さ
・就業時間が希望と合わない
・賃金が低い
・休暇が少ない、とりにくい

上記の理由により保育士資格を持っていても保育所に就業しなかったり、早期離職してしまったりしています。保育士不足により、保育士一人で多くの子供を見なくてはいけなくなったり、事務的な作業や早朝から閉園時間まで勤務したりと一人あたりの業務が多くなってしまいます。多忙のあまり余裕がなくなりストレスを抱え、子供にあたってしまい、不適切保育につながってしまいます。

保育園での虐待を防止するには

人権擁護のためのセルフチェックリスト

では虐待が起こらないようにするにはどうしたらいいでしょうか。虐待を防ぐにはまず、保育士一人ひとりが適切な保育を心がけることが必要です。全国保育士会が作成した保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリストというものをご存知でしょうか。人権擁護のためのセルフチェックリストは保育者自らの保育を振り返り、保育の向上につなげることを目的としています。このチェックリストでは良くないと考えられるかかわりを5つのカテゴリーにわけ、保育現場の1日の流れに沿ってチェックしていくことができます。人権擁護のためのセルフチェックリストは気軽に自身の保育をチェックすることができるので、ぜひ活用してみてください。

保育士の業務負担を軽減する

保育士の負担を軽減することができれば、保育士が余裕をもち保育活動をすることができます。業務改善の取り組みとして、

・保育士と保護者がスムーズに情報共有できるようにICTを活用する
・保育士でなくても対応できる業務で保育補助者を活用する
・書類作成に時間がかかるため、記録・書類業務の見直しをする
・保育士がゆとりをもてるよう働き方の見直しをする

があります。(参考:保育分野の業務負担軽減・業務の再構築のためのガイドライン)上記のように現在、保育士の業務負担軽減に向けてさまざまな取り組みがされています。これからさらに保育士にとって働きやすい環境になっていくのではないでしょうか。

周りに気を配る

いくら自分が気を遣っていても、もしかしたら自分の周りで虐待のような行為が行われている可能性があります。保育活動の中で周りの保育士と子供がどのような関わりをしているのか気を配ることも大切です。周りを見渡したら、今まで気づかなかったが他の保育士が行き過ぎた行為をしているところを早期発見できるかもしれません。また、他の保育士が忙しさでストレスを抱え、イライラしている様子を見たら、声をかけてみましょう。ストレスの緩和やコミュニケーション不足の会話にもなりますよ。

虐待に関わる法律

児童福祉法

児童福祉法の虐待に関する法律は以下の通りです。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準から引用しました。

(児童福祉施設の一般原則)
第五条 児童福祉施設は、入所している者の人権に十分配慮するとともに、一人一人の人格を尊重して、その運営を行わなければならない。
(入所した者を平等に取り扱う原則)
第九条 児童福祉施設においては、入所している者の国籍、信条、社会的身分又は入所に要する費用を負担するか否かによつて、差別的取扱いをしてはならない。
(虐待等の禁止)
第九条の二 児童福祉施設の職員は、入所中の児童に対し、法第三十三条の十各号に掲げる行為その他当該児童の心身に有害な影響を与える行為をしてはならない。
(引用:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準)

内容は保育園を含む児童福祉施設の園児に対し、差別的扱いをしてはいけない、園児の身体や精神を傷つけてはいけないというものです。法律でもあるように子供一人ひとりを尊重して適切な保育をしていきましょう。

児童虐待防止法

児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)では児童虐待の定義が定められています。以下、引用しました。

(児童虐待の定義)
第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
(児童に対する虐待の禁止)
第三条 何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。
(引用:児童虐待防止法)

内容は先ほどの「保育園内の虐待による不適切保育とは」と同じようなものです。子供を保護する立場の保育士も虐待は絶対にやってはいけないことです。法律でも定められているのでしっかり守りましょう。

保育園内で虐待を疑ったら

上司や園長に相談

もし保育園内でほかの保育士が虐待を疑うような行為をしていたらどうしたらいいでしょうか。同僚の保育士に相談してもいいかもしれませんが、中々同じ立場では注意しにくいかもしれません。まずは上司や園長に相談することをおすすめします。監視カメラが設置してあればいいのですが、設置されていない場合は証拠が必要です。録音やできれば動画を撮影しておけばより信憑性は確実になります。

児童相談所に通報

上司や園長に相談しても対応してくれない場合もあるかもしれません。さらには、隠ぺいしようとする可能性もあります。実際に保育園の虐待事件でもありました。その場合は児童相談所に通報をしましょう。その際も証拠があるとなお良いです。上司や園長が対応せず、そのままにしているとさらに子供への被害が大きくなる可能性があります。対応してくれないとわかったらすぐに通報することをおすすめします。

見て見ぬふりは犯罪になる場合も

虐待行為を目撃して上司や園長に報告したり、通報するのはとても勇気のいることです。しかし、見て見ぬふりをして放置していると罪になる可能性があります。保育士としての資格をはく奪される場合もあります。虐待行為は子供の将来や命に大きく影響します。自分の行動一つで子供を救うことができるのです。保育士は本来、子供を守ることが仕事です。子供への被害を増やさないためにも自ら助ける勇気をもち、行動しましょう。

まとめ

悲しい事件を起こさないように適切な保育をしよう

保育園に通う子供はまだ自分の気持ちをうまく言葉にして伝えることが苦手です。子供が口に出して言わなくても虐待行為をすることで一生の心の傷となって残ってしまいます。もし、子供が嫌がっているそぶりをしていたらその子供の気持ちを汲み取ってあげましょう。また、虐待行為を目撃した場合には、見て見ぬふりをせずに子供のためを考え行動していくことが大切です。子供が安心して保育園に通い、笑顔を絶やさないような環境を目指していきましょう。

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