愛着形成とは?判断方法やコツを解説!【チェック・時期・やり方】

子どもの発達には愛着の形成が必要不可欠。愛着の形成は、子どもが人に対して信頼感を覚えるきっかけとなります。また、愛着の形成は子どもが成長したあとも本人の性格や人格に大きく関わる重要な要素となりますよ。今回は、そんな愛着形成や子どもの愛着行動、判断方法などについてご紹介するほか、愛着形成が不十分だとどうなるのかについてご説明します。今回の記事を読んで、子どもの愛着形成を育む際の参考にしてみてください。

愛着形成とは

子どもが信頼出来る人にくっついて安心する行為

愛着形成とは、子どもが信頼出来る人にくっつくことで安心する行為のことを指します。赤ちゃんや小さな子どもは抱っこしてあげると安心しますよね。皆さんも、大人になってからも不安を抱いたり怖いと感じたりしたときは、恋人や友人にくっつくと安心した覚えはありませんか?この安心するといった行為こそが愛着形成です。愛着形成をする対象の人物がいることで子どもは安心感を抱き、のびのびと成長することが出来ます。

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愛着理論はいつ生まれた?

1969年にジョン・ボウルビィが初めて提唱

このような愛着形成について初めて言及したのがジョン・ボウルビィという人物です。彼は1969年に発行された『愛着行動』という著書にて、愛着理論と共に愛着形成について提唱しました。著書によると、子どもは社会的、精神的発達を正常に行うために、育て親と親密な関係を築く必要があるようです。育て親との親密な関係構築がなされなければ、子どもは成長において社会的、心理的に問題を抱えるようになってしまうとのこと。以上が愛着理論の主な内容ですが、今となっては当たり前のことのように思えますね。当たり前のことだからこそ、愛着形成がしっかりされているかを日々チェックすることが大切ですよ。

愛着形成の4段階

1.人物を特定しない働きかけ

愛着形成には4つの段階があり、最初の段階は人物を特定しない働きかけをする段階となります。この段階は生後8〜12週までの期間でみられ、子どもは特定の人物を区別することなく誰に対しても興味を示します。主な行動としては、人の顔や行動を見て興味を示し、それに対し笑ったり手を伸ばしたりといった行動が見られるでしょう。この段階はどの人物がどのような接し方をしてくるのかを見分ける段階ですから、愛着形成の土台となる大切な期間といえます。

2.特定の人物に対する働きかけ

2つめの段階では、特定の他者に対する働きかけをする期間に入ります。これは生後6ヶ月程までの時期でみられ、この段階になると親密な人物への興味がより強くなります。今までは人物を特定せずに笑いかけたり手を伸ばしたりしていましたが、母親など一緒にいる時間が長い人物への働きかけが多くなりますよ。しかし、この段階ではまだ特定の人物が不在のときに泣くといった行為は見られません。

3.特定の人物に対しより愛着行動を見せる

3つめの段階になると、特定の人物に対しての働きかけがより顕著に現れます。この段階は2〜3歳頃まで続き、母親などの特定の人物に対しての愛着行動が強くでる時期です。例えば、特定の人物を後追いしたり抱きついたりといった行為や、その人物が不在のときに泣くと言った行為が見られるでしょう。また、愛着を持つ人物とその他の人間を区別することが確実に出来るようになり、知らない人がいると警戒したり不安を抱いたりします。

4.対象者がいなくても愛着を維持出来る

4つめの段階では、対象となる人物がいなくても愛着を維持することが出来るようになります。この段階の子どもはこれまでの段階よりも精神的な成長が見られ、母親などの特定の人物が不在のときでも情緒的な感情を保つことが出来るでしょう。また、愛着をもつ人物の感情や行動から、自分の感情や行動をコントロールすることが出来るようになっていきます。双方が親密なコミュニケーションを取ることが、今後の関係維持のために必要なことになりますね。

愛着行動の種類

発信行動

発信行動は愛着関係を築いた人物の注意や関心を引き、かまってもらおうとする行動を指します。例えば、かまって欲しいときに泣いたりぐずったり、手をのばしたりする行動などが発信行動に該当するでしょう。また、相手をじっと見つめたり声を出したりして相手の注意を引くといった行動もします。大人からすると、小さな子どもがそのような行動をしていたら可愛くてかまってあげたくなってしまいますね。

接近行動

接近行動は、愛着を築いた人物に対して自ら接近して愛着表現をする行動を指します。例えば、愛着を築いた人物が離れた場所にいるとそこに自ら行ったり、その人物が離れようとすると自らその後を追いかけたりします。子どもが自ら自分の後を追いかけてきたら嬉しいですよね。ハイハイや独り立ちが出来るようになると、これらの行動がより見られるようになるため、およそ生後8ヶ月〜1歳児の時期からこの行動が増えるでしょう。

定位行動

定位行動は、愛着を築いた人物がどこにいるのかを特定する行動を指します。例えば、母親の行動を目で追いかけたり、声のする方向を向いて目で探したりする行動が見られるでしょう。ある程度の視力や耳の聞き分け能力が必要ですので、首がすわったあとの時期からこの行動が増えてきます。やがて言葉を話すように出来るようになってくると、視野や聴力だけでなく声を出して直接母親を呼ぶようになります。「どこにいるの」と直接呼びかけてきますので、しっかりと反応をしてあげましょう。

愛着形成のチェック方法

新奇場面法を利用しよう

愛着形成がされているかを確かめる方法として、新奇場面法という方法があります。手順は以下の通りです。

1.ある一室に母親と赤ちゃんを入れ、2人で遊んでもらう。

2.母親は一度部屋から出ていき、赤ちゃんが知らない人物が部屋に入る。

3.母親が再び部屋に入り、知らない人物は部屋から出ていく。

4.もう一度母親は部屋から出ていき、知らない人物が部屋に入る。

5.知らない人物は赤ちゃんを慰める。

6.最後に知らない人物が部屋から出ていき、母親が部屋に入る。

反応の種類

安定型

新奇場面法で得られる子どもの反応によって、どのくらい愛着形成がなされているかが判断出来ます。反応の一つは安定型で、日本の赤ちゃんの6割はこの反応だと言われています。反応の仕方としては、母親と離れたときは泣いたり後追いをしたりし、再会出来たときは喜ぶ仕草を見せる反応をしますよ。このパターンは親と子ども双方がコミュニケーションを取れており、子どもにとっては安心感のある関係性であるといえます。

回避型

2つめの反応の種類は回避型。回避型は、母親が離れても不安な感情を表さず後を追うこともしないような反応を指します。このような反応をする原因は、子どもの働きかけに親が反応しきれておらず、十分なコミュニケーションがとれていないことが挙げられます。また、子どもが泣いているときも慰めずに叱ったり避けていたりすると、子どもはこのような反応をすることがありますよ。この回避型の反応をする子どもは、日本の子どもの15%ほどだと言われています。

不安型

3つめの反応の種類は不安型。不安型は、母親が不在のときに不安な感情を顕著に表し、大泣きしたり混乱状態になったりします。その分母親と再会出来たときはべったりくっつきますが、どうして離れたのと叩くような仕草が見られるのが特徴です。子どもの感情が乱れやすいのは、親が子どもの様子に対しよく反応出来ていないからだと言われていますよ。少しでも子どもの不安を無くすために、子どもの感情に寄り添った保育を心がけたいですね。

無秩序型

4つめの反応の種類は無秩序型。無秩序型は、安定型のように泣いたり後追いせず、不安型のように大泣きしたり感情が乱れることがありません。母親と離れるときは割とあっさりしていますが、再会のときは目を合わせずに接することが多いのが特徴です。また、知らない人に対しては逆に安心感を抱いているような様子を見せることも。実は、この反応は子どもが虐待や適当な育児を受けていることが原因と言われています。

愛着形成が不十分だとどうなる?

コミュニケーション能力に影響する

愛着形成が不十分だと子どもの成長にどのような影響が及ぶのでしょうか。一つは、子どものコミュニケーション能力に影響が及びます。愛着形成には母親や養育者などと子どもとで親密なコミュニケーションを行うことが欠かせません。それが足りないと子どもは、十分なコミュニケーションを幼い内に取ることが出来ず、相手との絆を確立することが難しくなってしまいます。コミュニケーションが十分に取れなくなってしまうと人との関わり方で余計な不安を抱いてしまいますよ。子どもとのコミュニケーションが足りていないなと感じる方は、いつもよりも多めに接してあげてください。

性格の形成に影響する

十分なコミュニケーションを取ることが出来ずに相手との絆の確立が難しくなることを、マターナル・デプリベーション(母性剥奪)と言います。ボウルビィは、この状態では他者への愛着形成が難しくなり、これを人を愛せない性格と表現しています。人を愛することが出来なければ、同時に相手からも愛されることが難しくなるでしょう。これが負のループとなり、本人の性格がより内向的になっていきます。幼いうちから愛のあるコミュニケーションを心がけるようにしましょう。

依存症になるリスクが高くなる

愛着形成が不十分だと依存症になるリスクが高くなります。愛着形成が不十分な子どもは親のような心の拠り所となる存在がなく、何かにすがっていないといられない状態になりやすいです。多いケースとしてはタバコやお酒.。自身で感情のコントロールをすることが難しく、気持ちを制御するためにタバコやお酒がないと気持ちが落ち着かないという人は多いです。このように、依存症の人は過去に十分な愛着を形成する経験を得られていないことが考えられます。

愛着形成のやり方のコツ

常に子どもの感情に寄り添い愛を持つ

愛着形成を十分なものにするためには、常に子どもの感情に寄り添い愛を持って接することが大切です。生まれてすぐの子どもは人物を特定せずに働きかけをしますが、その段階で愛を持って接してくれる人を見分けています。この人は愛を持って自分に接してくれていると子どもが分かれば、愛着形成は自然とうまくいくでしょう。逆に愛のない適当な接し方をする人に対しては、子どもは強い不信感を抱くようになります。常に子どもの感情に寄り添い、どんなときでも愛を持って接するように心がけましょう。

まとめ

子どもの成長のために適切な愛着形成を行おう

いかがでしたでしょうか。今回は愛着形成の段階や愛着行動の種類、判断方法などについてご紹介しました。愛着形成は、子どもと親や養育者の間で親密なコミュニケーションをとることでうまくいくとされています。ただコミュニケーションをとるのではなく、お互いに愛を持って接することで両者の間で信頼関係が生まれるでしょう。愛着形成は子どもの成長に欠かせない要素の一つです。今子どもの愛着形成が難しいなと感じている方は、今回の記事を参考にぜひ挑戦してみてください。

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