パラシュート反射とはなんのこと?知らないと思わぬ事故に繋がる【いつまで・練習・消失時期・乳児】

みなさんパラシュート反射という言葉を聞くと何を思い浮かべますか?パラシュートと聞くと一般的には傘のような形をした、空から落下する際に用いる器具のことを思い浮かべるのではないでしょうか。あまり聞き覚えのないこの言葉ですが覚えておくと乳児検診や保育士試験の際などにとても役立ちます。今回はパラシュート反射についてご紹介するとともに判断方法や確認方法についてもご紹介します。動画でも例をご紹介しているので保育園でクラスを担当する保育士さんや子育て中の方などぜひ参考にしてみてくださいね。

パラシュート反射(保護進展反応)とは

乳児期の姿勢反射の一つ

パラシュート反射とは乳児期の姿勢反射のひとつです。乳幼児健診(生後9か月~10か月健診)のチェック項目の一つでもあります。パラシュート反射は大きく2種類に分けられます。転びそうになった際に体を守るためにとっさに手を前に出すものが前方パラシュート反射。転んだ時以外にも体を左右に傾けたときや後ろに傾けたときなど手をつこうとする動作がみられるのが側方パラシュート反射です。子どもの運動機能が発達していくにつれて側方パラシュート反射は段々と見られるようになります。大人も転ぶときは手をついてから転びますよね。赤ちゃんにも本能的な防御動作が働いているというわけです。歩くための準備のひとつですね。またパラシュート反射という名前の由来は、手を開くときの形がパラシュートが降下するときのように見えるというところからきているそうです。

保育士くらぶ

パラシュート反射は何のための現象か

転倒防止や体を支える為

赤ちゃんや乳児さんはよく転びますよね。小さい時の子どもの身体は幼児体型と言われています。大人と違い、頭が大きく手足の大きさは胴体に比べると小さいです。またお腹の筋肉が鍛えられていない為お腹がぽっこりとしていますよね。その為、全身のバランスが安定せず一番重い頭から転んでしまいます。歩き始めたばかりの子どもは、不安定でいつ転ぶかわかりません。パラシュート反射が正常に働かないと頭から地面にぶつけてしまいます。パラシュート反射は転倒した際に自身を守れるための大切な発達の1つですね。パラシュート反射が良く見られるようになると、歩くための準備が整いつつある目安にもなります。

パラシュート反射はいつからいつまで起こるのか

生後6か月~9か月ごろから一生涯続く

パラシュート反射が見られるようになるのは、一般的に生後6か月ごろから1歳の間であるといわれています。だいたい生後10か月ごろまでにできるようになります。個人差があるので生後6か月を過ぎてパラシュート反射が見られなくても、焦らなくて大丈夫です。反射反応がなくても、ゆっくり見守ってあげましょう。パラシュート反射は生まれ持った性質ではなく成長の途中からでてくる反射反応。一度習得してしまえば、生涯続きます。しかし大人になるにつれて、反射反応はどんどん鈍くなります。転んで骨折や怪我をしてしまうのはパラシュート反射の反応速度が鈍くなり手が前に出なくなってしまうせいでもありますね。

反射反応とは

姿勢反射

反射反応とは、頭で考えるよりも先に自然と体が動いてしまう体の反応のことを指します。パラシュート反射は姿勢反射という反射反応です。姿勢反射とは身体中に与えられた刺激に対応して、反射的に筋が緊張してピンと張ったり、収縮してぎゅっと縮こまります。その動きで身体の姿勢やバランスを保とうとするものです。 パラシュート反射以外にも姿勢反射はいろいろ種類があります、他の種類もご紹介しますね。

ホッピング反射

ホッピング反射とは、体を倒そうとしたときに無意識に足を前に踏み出す状態を指します。姿勢が崩れた時や、身体に外部から力が加わった時に身体の状態を平行に保とうとする反射反応です。ホッピング反射は大体生後15~18か頃に見られるといわれていますが、その期間に反応がなくても心配しすぎないでください。個人差があります。パラシュート反射は手に関する反射反応ですが、ホッピング反射は足に関する反射反応ですので区別を付けておきましょう。

ランドウ反射

ランドウ反射とは、赤ちゃんがうつ伏せの状態で持ち上げられたときに、背筋を使って頭を持ち上げようとする反応。そしてそのまま水平の状態を保とうしている状態を指します。ランドウ反射は生後6か月~2歳ごろまでに見られるといわれています。ハイハイをするときの筋力や運動機能を養う為に備わっている反応なんですよ。赤ちゃんが抱っこを嫌がる際などの力強い反り返りのような伸びも、ランドウ反射が関わっていたのですね。

原始反射

また、よく間違えられやすいのが原始反射です。原始反射は姿勢反射と異なり、生まれた直後から4か月ごろまでにみられる反応です。姿勢反射と異なり、成長するにつれて段々と消えていきます。例えば、生後間もない赤ちゃんに指を差し出すとぎゅっと握り返してくれますよね。しかし、時間がたつにつれて反射的に握ることはなくなります。この反応は掌握把握反射と言って赤ちゃんの代表的な反射とも言えます。その他にもまだ歩けない赤ちゃんの足の裏を床に触れさせます。そうすると自然と足を前に出して歩こうとするしぐさも歩行反射といわれる反射反応の一種ですよ。その他にも面白い原始反射があるので一部をご紹介します。

探索反射

赤ちゃんの唇やほほに触れると触れたものを探すように顔と首を動かすことはありませんか。探索反射とは触られたものを探すようにその方向に頭の向きを自然と変える反射です。赤ちゃんがお母さんのおっぱいを探すための行動ともいえますね。首の筋肉の発達状態により、反応が強く出る子や弱く出る子がいます。探索反射の反応が出ていれば強弱は特に問題ないので安心してください。探索反射は出生後すぐに見られて、生後4か月頃までに消失します。

モロー反射

モロー反射とは、赤ちゃんが外からの刺激を受けると手足をびくっとさせて伸び縮みする反応です。寝ている時にも良く見られる現象ですよ。モロー反射を見るには、赤ちゃんのことを仰向けの状態にして抱きかかえながら持ち上げます。そこから急に落とすような刺激を与えると両手両足をピンと伸ばし、反射的になにかに抱き着くようなポーズを取るので見ることができます。モロー反射はだいたい生後3~4か月頃までに消失します。

吸啜反射

吸啜反射とは赤ちゃんが哺乳瓶や指などが口に触れたときに、口の中に入ったものをなんでも吸う様子を指します。下あごを動かして規則的にリズムよく吸い付きます。おっぱいを飲むために必要な反射反応ですが、実はこの動作が無意識のうちに口の中を陰圧して母乳を出しているってびっくりですよね。基本的に口に触れたときに吸啜反射は起こるのですが、起こらない事もありました。赤ちゃんがお腹いっぱいであるときは起こらないことが多いです。吸啜反射はだいたい生後4~7か月頃までに消失します。

嚥下反射

嚥下反射とは、赤ちゃんが口の中にある液体を口から胃へと飲む込み運ぶ一連の動作を指します。探索反射と嚥下反射と吸啜反射の一連の反射反応をすべて合わせた動作を哺乳反射といいます。赤ちゃんのほっぺがぷくぷくしている理由は、口腔内を隙間なくするためにとっても合った形って知っていましたか。赤ちゃんの口腔内の形や反射反応が適切に作用しているおかげで赤ちゃんは教える事なく母乳やミルクを飲むことできるんですね。子どもの発達の基礎なので覚えておきましょう。嚥下反射はだいたい生後5~6か月頃までに消失します。

パラシュート反射の調べ方

体を持ちあげて確認する

赤ちゃんがパラシュート反射を正常にできているかチェックする方法をご紹介します。

①赤ちゃんの両脇をかかえて持ち上げます。

②空中でうつ伏せ寝の状態にします。

③体を水平状態から赤ちゃんの頭を急に下にさげます。

④とっさに手を前に出したり体を支えようとするか反応を見ます。

この際に手が前に出た場合はパラシュート反射がしっかりと獲得できていますよ。乳児期検診などの際には、赤ちゃんが怖がってしまう場合があります。遊びの中で自然に確認できると良いですね。

バランスボールを使う

身体を持って確認するのが怖いという場合は、他の方法でも確認ができます。

①まず小さめのバランスボールを用意します。

②赤ちゃんをバランスボールの上に座らせます。この時、体はしっかりと支えてください。

③腰のあたりをもって支えます。

④落ちないように注意して前に体を倒してください。

⑤その際に赤ちゃんが手を前に出すかどうかを確認します。 ⑥前に倒すだけでなく、左右前後でも試してみてください。

⑤と⑥の際に手が倒した方向にとっさに出れば、しっかりとパラシュート反射を獲得することができています。

パラシュート反射確認時の注意点

しっかりと支える

パラシュート反射反応が見られるか試す時期は必ず6か月以降にしてください。6か月以前に試してしまうと、まだ首が座っていなかったり、反射反応前ですのでそのまま頭からぶつかってしまいます。また、体を支えていても急に激しく動いてしまう赤ちゃんもいます。動いた際も落ち着いて間違っても頭から落としてしまわないようにしっかりと支えてください。思わぬ怪我や事故に繋がります。また、確認する際は必ず一人では行わないようにしましょう。医師の方の指示を基に対応してください。

パラシュート反射が起こらない理由

発達の個人差

パラシュート反射が起こらない理由は大きく分けて3つあります。1つ目は発達速度の違いです。パラシュート反射は子ども達が発達していく時の過程の一つでしたよね。子どものごろの発達スピードは大人の時とは違い思った以上に個人差があります。保育士さん達は様々な月例の子どもと関わっている為、違いがより分かりやすいのではないでしょうか。ただ、保護者の方々はあまり他の子どもと同月齢で比べてみるということができません。他の子と違うと不安に陥りやすくなってしまいます。子どもに必要以上にプレッシャーをかけてしまわないように、いつでも相談に乗れる環境を用意してあげておくとよいですね。

怪我や骨折

2つ目は、けがや骨折によって少し発達が止まっている場合です。なんらかの理由でけがをしてしまっている時は、違和感やけがに意識を取られて上手に動かせないことがあります。また元々パラシュート反射をしていても、けがや骨折をして反応が後から消滅してしまうケースも。その場合はパラシュート反射をしないだけで、神経学的な問題は無いと考えられています。元々出来ていたことが急にできなくなっていると少し怖いですが、あせらずに様子を見てあげてくださいね。

脳系の障害の疑い

3つ目は脳に関する機能の障害によるものです。脳性麻痺や中脳の発達が遅れている可能性がある為注視してあげてください。脳性麻痺とは、脳の損傷による後遺症で満2歳児までに発現するものです。運動と姿勢に影響があり軽度から重度まであります。手がこわばったり筋力が十分発達していない為パラシュート反射で上手く伸び縮みをすることができません。障害については、保護者の方に伝える際も一緒に生活をする子ども達に伝える際にも最新の注意を払いましょう。少し他の子と違いを感じた際は、周りの先生に相談したり、保護者の方のお話しを聞いてみてください。あくまでも判断の材料の1つですので決めつけず客観的な視点をもちましょう。

まとめ

個人差があることを理解し怪我や事故が起こらないように見守る

今回は、パラシュート反射(保護進展反応)についてご紹介しました。あまり聞き覚えのない言葉ですが、子どもが安全に成長するためにとっても大切な反応ですよね。保育士試験の問題でも出題されることがあるので原始反射と姿勢反射の区別をしっかりとまとめて覚えておきましょう。しっかり反射反応が見られないとけがや事故につながってしまいます。つかまり立ちや歩き始めの子ども達は特に危険度が増しますので近くで見守ってあげましょう。また、上記でも述べたように子どもの成長の個人差はとても大きいためパラシュート反射が見られる時期もその子によって異なります。その子にあった速度がありますので、慌てずに対応してあげてください。沢山子ども達と関わって適切な距離感を見つけてみてくださいね。

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