保育課程を編成する時の留意点は?【完全的な計画・指導計画・例】

保育課程とは保育園の方針や理念に基づき、子どもの発達過程に応じた保育のねらいや内容及び保育の環境を構成することを指します。子どもが保育園生活を通して何を得ることができ、どのように発達を促していくのかを長期的視野を持って作成しましょう。また年齢別に指標を立てるため子どもの発達段階を理解しておくと良いですね。当記事では保育課程の構成から編成順まで詳しく紹介します。保育過程を編成する予定がある保育士さんはぜひ参考にしてください。

保育課程とは?

保育園の方針に基づき子どもの発達過程を示したもの

保育課程とは厚生労働省によると

子どもの成長・発達を長期的視野で継続的に捉え、発達過程に応じた保育のねらいや内容及び保育の環境を体系的に構成することにより、保育の質の向上に資することができる

出典:新たな保育所保育指針において「保育計画」を「保育課程」に改めることついて

と記載があります。子どもの発達段階を考慮して、保育園が創意工夫をして保育が行えるよう目標や計画表を立てます。この保育課程の対象者は、保育時間の長短や途中入園問わず入所児童すべてになります。厚生労働省が定める保育所保育指針より保育時間は原則8時間とし、各地方や子どもの家庭状況を考慮した上で定められています。延長保育や休日保育を受ける子どもの場合は、時間の長短に合わせて保育課程を編成する必要がありますね。

保育士くらぶ

保育課程と教育課程の違いは?

幼稚園と保育園の違い

保育課程と教育課程の違いはあるのでしょうか?保育課程は保育所保育指針の発達過程を基準に、保育園生活の全体を通して子どもが得る経験内容を示したものです。一方で教育課程は幼稚園教育要領を基準に、幼稚園児が入園してから卒業までの園生活を通して得る経験内容を示したものになります。教育目標を基に方針を定め、年間計画を立てる点など内容に大きな差はありません。保育園や幼稚園であっても長期的視野を持ち、具体的に計画を練ることを求めらるでしょう。

保育課程の種類

保育課程の年間計画

保育課程の年間計画は、厚生労働省が定めた保育所保育指針を踏まえ1年間の活動内容及び、どのような保育を展開するか示します。年度始めの4月から翌年の3月までの1年の見通しを立てて、目標や行事などの活動詳細を記載しましょう。年度末に年間計画を振り返り、計画通りに進んだのかあるいは滞った点や新規に追加したい行事など振り返ると良いですね。淡々とした保育生活にならないように、様々なイベントを組み込み、イベントごとにねらいを定めましょう。

保育課程の指導計画

保育課程の指導計画は別名「保育指導案」と呼ばれ、子どもをどのように援助し心身の発達を促していくのかを明確にします。厚生労働省によると

保育所は、全体的な計画に基づき、具体的な保育が適切に展開さ れるよう、子どもの生活や発達を見通した長期的な指導計画と、そ れに関連しながら、より具体的な子どもの日々の生活に即した短期 的な指導計画を作成しなければならない。

保育所保育指針解説

と記されています。年や数ヶ月単位の長期指導案と、子どもの生活に合わせた週や日単位の短期指導案それぞれ作成し組み合わせて活用します。

保育課程の編成

保育理念・保育方針・保育目標

それでは実際に保育課程の内容や書くときのポイントを紹介しましょう。まずは保育課程を示す上で基盤になる保育理念と保育方針、保育目標を記載しましょう。保育理念もしくは事業運営方針とは、その保育園を表すコンセプトや根底にある根本的な考え方を表す重要なキーワードになります。また保育目標は保育方針よりも具体的に書かれていることが多いです。子どもと向き合う上での目標を複数個挙げましょう。時折保育園の保育理念を思い返すことは、行っている保育の方向性が正しいか見直すきっかけになりますね。

年齢別の保育目標

年齢別の保育目標は、子どもが保育園生活を通してどのように発達するのかという目安になります。子どもの年齢に沿った発達段階を意識しながら書きましょう。例文や特徴をまとめたので参考にしてください。

    □ 0歳児
    0歳児は安全に健やかに育つよう配慮をすることが大切です。
    ・子どもの発達に合わせて生活リズムを整える。
    ・子どもが安心できかつ十分に擁護の行き届いた環境を作る。
    ・保育士との関わりを通して、人との信頼関係を作る。
    ・様々なものに興味や好奇心を持ち表現をする力を育てる。

    □ 1歳児
    1歳児は行動範囲が広くなり、好奇心が旺盛に自我も芽生えるようになります。心身の健康の基礎を培いましょう。
    ・自由に身体を動かすことができるよう、安全な環境作りを意識する。
    ・日常生活を通して得る経験から言語獲得に繋げる。
    ・子どもの好奇心を引き出す手遊びを行う。

    □ 2歳児
    2歳児は自分の気持ちを言葉で表現できるようになります。保育園生活を通し保育士さんやお友達と関わりを持ちことの楽しさを知ってもらいましょう。
    ・生活に必要な基本的動作を少しずつ促す。
    ・周囲との関わりを大切にする。
    ・言葉で表現することの楽しさを知ってもらう。

    □ 3歳児
    3歳児は言語の発達が目覚ましく、運動機能も発達します。
    ・基本的生活習慣の自立を目指す。
    ・子どもの意思を尊重して受け入れる。
    ・周りや環境に関わる際に求められる積極的な行動を促す。

    □ 4歳児
    4歳児はより高い運動神経が身につき、日常会話はほとんどできるようになります。豊かな心を育み、思考力の芽生えを培いましょう。
    ・集団生活を通じてルールやマナーを覚え始める。
    ・行事や製作を通してできることの喜びを感じる。
    ・数字や文字を遊びに取り入れ興味を持ってもらう。

    □ 5歳児
    5歳児は知能や会話力が高まり、団体行動が取れるようになります。就学準備を行うため、協調性が身につくようサポートしましょう。
    ・相手の気持ちを考えて行動することができる。
    ・自分で目標を立てて、意欲的に行動をする。
    ・年齢が低い者への気づかう気持ちを持ち、年長者へ敬意を払う。

養護と教育と食育の発達過程

養護と教育と食育の面からも年齢別に発達段階を示しましょう。厚生労働省によると

保育における養護とは、子どもの生命の保持及び情緒の安定を図るために保育士等が行う援助や関わりであり、保育所における保育は、養護及び教育を一体的に行うことをその特性とするものである。

保育所保育指針解説

と説明されています。保育課程において養護は生命の保持と情緒の安定という2点から保育内容が定められますね。生命の保持とは子どもが渇きや空腹、睡眠などを満たすなどの生理的欲求を満たすために援助を行い、健康で安全に過ごすことができる環境を整えることを言います。情緒の安定とは子どもを受け入れる姿勢をとり、子どもが自己肯定感を育むことを言いますよ。子どもは発達に応じて広い視野を持つようになるので、年齢に合わせた保育内容を立てましょう!教育は健康や人間関係、環境、言葉、表現の面から保育内容が定められます。年齢が上がるにつれて言語の幅が広がり、集団生活への適応が見られますね。最後に食育は食を営む力の基礎を育み、多くの種類の食べ物を取るようになるでしょう。食育について詳しく説明している記事があるのでぜひ参考にしてください。

健康支援・衛生管理・安全対策

健康支援や衛生管理、安全対策について関連する行事をまとめましょう。健康支援は3種類の健康診断や身体測定歯科検診、手洗いや歯磨きなどの保健指導など詳しく記載します。環境及び衛生管理は保育施設内外の清掃や玩具の消毒、職員の健康診断実施など実施項目を挙げますよ。感染症の早期発見や周知徹底も重要項目ですので、感染予防対策を記しましょう。安全対策及び事故防止は、定期的に行う避難訓練や消防設備点検、建物検査、非常の食料やAED緊急地震速報受信機などの設置物を記載します。

保護者及び地域への支援

保護者支援は育児における保護者の負担を減らすことを目的としています。保育士の専門的な知識を活かし、保護者に合った適切な支援を提供しましょう。個人面談や連絡帳を通して育児を援助をする以外にも、保育参観や園内見学に対応し子どもの養子を知ってもらうことも大切ですね。また地域への支援とは民生委員との連携やゴミ拾い運動への参加、園庭開放などがあげられます。他にも老人会や高校生との交流など幅広い年代と関わる機会を持てると良いですよ。

小学校との連携

園児が小学校との連携をとり、子どもの生活や学びの基盤を支える活動を幼保小連携と言います。保育園と小学校では時間の使い方や、遊びから学びへと活動内容が変化するなど大きな違いが見受けられます。ロッカーの整理や体操服への着替えなど自分自身でこなさなくてはいけない課題が増えますね。このように大きく変化する環境に子どもが馴染むことができるよう、小学校1年生の教育見学やセミナーを用意している保育園もあります。他には子どもが小学校で適切な教育を受けることができるように、保育園の様子や発達状況を記す保育所児童保育要録も大切ですよ。

保育課程の編成手順

保育書を参考にする

保育課程のシラバスを作成する際は保育書を参考にしましょう。保育書を選ぶコツは保育課程の目的について詳しく記載がある点と指導計画の事例が多く掲載してある点を抑えることです。DVDにフォーマットが収録されている保育書もあるので自分に合う参考書を探してみてください。それ以外にも各保育園が掲載している保育課程がインターネットに公開されているので、どのような基準を持ち作成しているのか、こだわりや工夫も含めて参考にすると良いですね。

子どもの家庭環境を把握する

次に子どもを取り巻く家庭環境を把握してから作成を進めましょう。例えばひとり親家庭の場合、母の日や父の日製作はどう対応するのかなど保護者の意向を把握することは重要です。家庭の子どもの様子を知ることで、保育園での様子と大きな違いはないかなど発達状況も確認することができますね。保育士と保護者の密な連携は、指導書やシラバスを作成する上で参考になることが多いので積極的に信頼関係を築きましょう。

発達過程の見通しを立てる

保育課程のシラバスでは年齢別に目標を立てるので、子どもの発達の特性を理解しておく必要がありますね。文部科学省が掲載をしている保育所保育指針もぜひ参考にしてください。1、2歳には発達の個人差が大きく焦ってしまうことがあるかもしれません。しかし手遊びや知育おもちゃを通して自然と発語を引き出すことができるので指導計画に組み込むこともお勧めですよ。言葉あそびやリズム感や考える力を養う手遊びを他の記事で紹介しているのでぜひ参考にしてください。

全体的な計画と保育計画に違いはあるの?

全体的な計画は保育計画よりも広範囲の計画

全体的な計画は保育所保育指針の改訂により2018年4月から導入されました。全体的な計画は保育計画と比べて新しい視点を加えより内容を充実させた計画書になります。幼稚園と同様に小学校入学へつながる学びを意識した点が大きく異なります。特に日常生活における知恵集団行動への適応などに力を入れていますね。この全体的な計画は年間計画などの長期的計画の見通しを含み、これを基に保育課程や年間保育計画が作成されます。

全体的な計画を作成する時の留意点

全体的な計画でも保育計画と抑えるポイントは同じです。保育園の理念や方針を踏まえた上で、養護や教育、食育の観点から発達を捉えます。また子どもの保育時間や課程環境に配慮をし作成をしましょう。乳幼児期の教育を重視しているので、0~3歳児が円滑に幼児教育に移行できるよう計画を立てます。そして計画書を立てるだけではなく、実行した後に記録をとり記録をもとに目標の達成度を測りますよ。改善点が挙げられたときに速やかに修正、今後に生かすためにも丁寧に作成をすることが大切ですね。

まとめ

保育課程は子どもの成長の指標になります

保育課程は保育園の方針に基づき、子どもの発達過程に応じた保育計画を立てるものです。子どもの成長を見守る保護者のためにも保育課程の指導書や年間計画を作成することは重要ですね。子どもの発達段階を理解する以外にも保護者と信頼関係を構築することでスムーズに計画書を立てることができます。保育書や前年度の保育課程、先輩保育士さんの意見を参考にして年密な計画書を作成しましょう!

よくある質問

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