保育士不足改善のカギ「潜在保育士」とは?潜在している理由から復帰に向けた支援・対策まで

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待機児童問題改善の救世主!潜在保育士とは?

最近よく耳にする「潜在保育士」って?

待機児童問題とも密接に関わる「保育士不足」が社会問題となっています。

保育士さんの不足様々な課題があり、一足飛びに解消できるような単純なものではありません。そこで、その解消に向け期待されているのが「潜在保育士」です。

さて、最近あちこちで耳にしたり、目にしたりする機会が増えたこの「潜在保育士」ですが、これは「保育士の資格を所持しながらも、現在は保育士として働いていない人」のことを言います。

こうした潜在保育士は、具体的にはどういった存在でどのくらいいるのでしょうか?

保育士不足の強力な助っ人になり得ると言われる潜在保育士についてまとめてみました。

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潜在保育士の実態

2種類の潜在保育士

まずは、潜在保育士がどのような人達を指すのかを改めてご紹介します。

平成23年度に、厚生労働省が㈱ポピンズに委託した調査潜在保育士ガイドブックによると潜在保育士とは“保育士資格を持ちながらも就業していない人”と定義されています。

つまり、一口に潜在保育士といっても、その中には

  • 保育士の資格は取ったけれど、仕事として「保育士」になることを選択せず他業種に就職した人
  • 保育士にはなったけれど、様々な事情で他業種に転職した人や、現在無職の人

が含まれているということになります。


潜在保育士の人数

平成27年度の保育士等に関する関係資料によると、潜在保育士は70万人にも上ります。

保育士不足解消への対策としては、まずは保育士を新たに養成することも重要です。

しかし、このようにすでに保育士資格を取得している70万人の潜在保育士を保育の現場に呼び戻すことが、強力かつ迅速な解決策になり得ると想像できるのではないでしょうか?

離職する保育士さんの年齢・勤続年数

保育士さんの離職率は、平成27年の「保育士等における現状」によると10.3%です。

平成25年度の離職者数は3.3万人で、そのうち約3割の人はまた保育士として再就職を希望しています。

それ以外の人は、後に保育士に復職される方はいらっしゃるものの、多くの方が保育士を辞め、他業種へ転職もしくは失業となります。

保育士さんの離職率についてはこちらをご参照ください。

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では、離職する保育士さんの年齢・勤続年数はどのくらいなのでしょうか?

平成23年度の調査ですが、前述の潜在保育士ガイドブックによると、現在保育に就業していない人は、40代が32%で一番多く、50代では28%30代では19%と続きます。

詳細なデータはありませんが、20代半ば~30代前半に離職する方がかなり多いのではないでしょうか?

短大卒や4年制大学卒での新卒者であればキャリア3年~10年くらいの方に相当します。

結婚・出産といった節目を機に退職する人が多いことと、経験年数が1年未満~3年くらいで保育の仕事に行き詰まりを感じて辞めていく人が多いためです。

これだけ保育士不足が叫ばれている現代ですから、保育士の資格を持つ人は、とても貴重な即戦力です!
そもそも、潜在保育士が保育士として入職しなかった、もしくは入職けれど退職した背景には、一体どんな原因があったのでしょうか?
その主な理由を3つ、詳しくご紹介します。

“潜在”している理由は?①賃金問題

保育士資格を持ちながら保育士として働かない理由としてまず挙げられるのが、保育士の年収が低すぎるという「賃金の問題」です。

厚生労働省の平成28年賃金構造基本統計調査によると、保育士の年収は、3,247,000円です。(平均年齢36.3歳)

初任給は一般企業に比べ、格段に少ないわけではないですが、昇給があまりない施設が多く、ある程度ベテランの保育士になっても一般企業で働く同年代の人より低収入であることは否めません。

就職活動中に保育士に見切りをつけて、他業種へとシフトする新卒者も多いですし、私立の保育園などに就職したけれど、年収の低さから転職してしまう人も多いようです。

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“潜在”している理由は?②労働環境

保育士さんの労働環境の過酷さも、離職に拍車をかけている一因と言われています。

通常の保育業務に加えて、保育日誌や連絡帳といった事務仕事もこなします。しかも連絡帳に至っては完全に手書きです…!

他にも、各種イベントや行事の計画や準備、それに伴う製作物の作製などもあります。

多くの保育士さんは、昼食や休憩時間を削ってこれらの仕事を行っています。

それでも終わらないためサービス残業や、時には仕事を持ち帰り…といった多忙な毎日です。

この膨大な仕事量、そしてそれをこなすためにかかる時間の長さが、保育士さんの健康を脅かし、退職へと追い込む原因になります。

世間では働き方改革が叫ばれていますが、保育士さんの過酷な労働環境を是正することは、特に急務ではないでしょうか?


“潜在”している理由は?③保護者対応が大変…

さらに、保護者対応が大変という理由もあります。

「モンスターペアレント」という言葉をよく耳にする時期がありました。

最近はあまり聞くことがなくなりましたが、だからと言って、理不尽ないちゃもんをつける保護者がいなくなったわけではありません。

サービス業なら付き物のクレーム対応ですが、近年は教育現場や福祉の現場でも同じような事が起こっています。

保護者との対応で、けっこう難しい例をいくつか挙げてみましょう。

クレーム

保護者対応のなかでも一番難しいのは、やはりクレーム対応でしょうか。

常識的に考えて、それはおかしいのでは?と思うような理不尽なクレームも、最近は増えているようです。

例えば、子ども同士がケンカした際に注意をしたら、帰宅後、子どもに話を聞き「何様のつもり?!」と電話をしてきた。

といったこともあるようです。

こちらに非があれば謝罪が必要ですが、わがままな要求や理不尽な言いがかりには毅然とした態度もやむを得ないのではないでしょうか…?

悪口・陰口・噂話

保護者同士での軋轢がある場合も、保育士さんは対応が難しいようです。

お迎えの時に保護者と話す機会が多いと思いますが、その際に他の保護者の悪口を言われる場合もあります。

気に入らない保護者の噂話を大きな声でしゃべったり、ひどい場合には子どもがいる前でその子の親の悪口を言ったりするなど、あからさまに嫌がらせをする方もいるようです。

そういった場合、肯定も否定もことを悪化させるだけなので、関わらない方がいいですが、聞かされる保育士さんは精神的につらいですね。

 
 

復帰するための対策

国による支援

待機児童問題とも密接な関係がある保育士不足解消のために、国もいろいろな対策を講じています。

地域限定保育士制度や保育士試験の年2回実施といった対策、処遇改善手当の支給や種々の研修の実施などです。

平成29年には「離職保育士届出制度」も始まりました。

これは、全国に45ケ所ある「保育士・保育所支援センター」一覧)に氏名・生年月日・住所・保育士登録番号・登録年月日・電話番号・メールアドレスなどを登録する制度です。

あくまで勧奨、すなわち任意ですが、登録すると就職・復職に関する情報を受け取ったり、研修に参加したりすることができます。

就職や復職をサポートすることで、人材確保につなげる対策です。

各自治体の支援

各自治体による独自の保育士人材確保の支援も活発です。

例えば、東京都の「保育人材確保の取組について」によると…

  • 保育士就業資金貸付制度
  • 保育士養成施設に対する就職支援事業
  • 保育従事職員資格取得支援事業・保育士就職支援研修、就職相談会
  • 保育士就職支援セミナー、保育実習
  • 未就学児をもつ潜在保育士に対する保育所復帰支援事業(貸付)
  • 潜在保育士の再就職支援事業(貸付)
  • 保育従事職員宿舎借り上げ支援事業
  • 保育士等キャリアアップ補助
    など。

就活準備金貸付制度

厚生労働省は、潜在保育士に対する支援として、平成28年より最大 40 万円の就職準備金の貸付を行っています。これが就活準備金貸付事業です。

参考:厚生労働省

 

お住まいの各自治体のホームページなどで一度確認してみて下さい。

まとめ

今回は、潜在保育士について解説してきました。

低収入過酷な労働環境保護者対応などの難しい人間関係…と、潜在保育士になってしまうことには保育士さんという職業ならではの理由がありました。

それでなくても子どもを預かる責任重大なお仕事なのに、大変なことが多すぎますよね。

現在、保育士として頑張っている方の中には、「もう保育士辞めたい!」と感じている人もいらっしゃるでしょう。

でも、考えてみてください。

保育士になるという決断をした理由はそれぞれあると思いますが、保育士という職業にやりがいや夢を感じて入職されたのだと思います。

そのやりがいや夢を実現できる保育園、今の環境よりもよい保育園はあるのではないでしょうか?

職業を変えてしまうのではなく、職場を変えてみるという選択肢も一つの手です。

保育士を辞めてしまう前に、他の保育園への転職も検討してみて下さい!

転職を検討中の保育士さんの職場探しをお手伝いする、保育士専門の転職サイト「保育情報どっとこむ」があります。

是非一度覗いてみて下さいね!


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