レッジョエミリア教育とは?~成り立ちや特徴、メリットをまとめて紹介~

レッジョエミリア教育とは?

皆さんこんにちは!保育士くらぶ編集部です。

皆さんは「レッジョエミリア教育」を知っていますか?

レッジョエミリア教育は今、世界で最も高く評価され注目を浴びています。

一体、一般的な教育と比べてどのような特徴があるのでしょうか?

今回は、是非知っておきたい世界で注目のレッジョエミリア教育について紹介します。

レッジョエミリア教育の成り立ち

世界で注目のレッジョエミリア教育の始まりは、第二次世界大戦の終戦直後北イタリアに位置するチーズの産地として有名なレッジョ・エミリア市でした。

地元の教員だったローリス・マラグッツィが掲げた「100のことば」を教育理念としていて、「子どもの無限の可能性」を伸ばしていく独自のメソッドを実践しています。

教育理念になっている「100の言葉」では、以下のような文があります。

子どもには 100通りある
子どもには 100の言葉 100の手 100の考え 100の考え方 遊び方や話し方
100いつでも100の 聞き方 驚き方 愛し方 歌ったり、理解するのに 100の喜び
発見するのに 100の世界 発明するのに 100の世界 夢見るのに 100の世界がある。
子どもは100の言葉がある (それからもっともっともっと)
けれど99は奪われる。
学校や文化が 頭とからだをバラバラにする。
そして子どもにいう 手を使わずに考えなさい 頭を使わずにやりなさい
話さずに聞きなさい ふざけずに理解しなさい
愛したり驚いたりは 復活祭とクリスマスだけ。
そして子どもにいう 目の前にある世界を発見しなさい
そして100のうち 99を奪ってしまう。
そして子どもにいう 遊びと仕事 現実と空想 科学と想像 空と大地 道理と夢は
一緒にはならない ものだと。
つまり 100なんかないという。 子どもはいう でも、100はある。

ローリス・マラグッツィ 田辺敬子訳

この詩のなかでは、従来の幼児教育は冷たいものだとして非難しています。そして、これと対になる教育がレッジョエミリア教育なのです。

「100の言葉」は、人には異なる価値観や個性があることを意味しており、子どもが持つ無限の可能性の象徴としています。

そのため、どこで受けても全く同じ教育が受けられると言うものではなく、その土地や地域性に合わせた柔軟な教育が行われています。

保育士くらぶ

レッジョエミリア教育の3つの理念

レッジョエミリア教育では、子ども一人ひとりの感性や意思、個性を尊重し、それらを伸ばしていくことを目指しています。

そのなかでも、レッジョエミリア教育で大切にしている理念が3つあります。

それは、「子どもの権利」「社会性」「時間」です。

今から、それぞれについて詳しく紹介します。

子どもの権利

子ども一人ひとりが思うままに行動して良い「子どもは権利の主体」というのが、レッジョエミリア教育の掲げる理念の1つです。「子どもの権利」を尊重するという教育理念が徹底されている所こそ、世界で最も高い教育方法の基準と呼ばれる所以です。

子どもの権利とは具体的にどのようなものが挙げられるかというと、何かを試してみる権利、質問する権利、間違う権利、答えを想像する権利、迷う権利、黙っている権利などが挙げられます。

このように、子どもが本来持っている特性を全て受け入れる姿勢を持つことが、子どもの尊重に繋がるとされています。

社会性

レッジョエミリア教育では、4~5人でグループに分かれ「プロジェクト」と呼ばれる活動を行います。

「プロジェクト」では、保育士が指示を出したりはせず、子ども達がお互いに話し合い、意見を出し合いながら作業を進めていきます。

子ども達が対等な立場で、テーマを決めたり、参加人数や「何を作るのか?」「どのように作るか?」ということを決めたりしていくことで、お互いの意見を尊重することや相違点を認めること等を身につけることができるとされています。

こうした作業を繰り返すことで、子ども達が自然と社会性を身につけられるように工夫しています。

時間

レッジョエミリア教育では、あらかじめ決められたカリキュラムや時間割が一切なく、子ども達のペースで「プロジェクト」を進めていきます。

プロジェクトの内容によっては、数ヶ月や1年単位で続く場合もあるかもしれません。

子ども達は、急かされることによって本来持っている創造性や好奇心を発揮することが出来なくなるといわれています。

このように長期的に1つのテーマを掘り下げて行くことで、子どもの時間感覚に合わせたゆとりある教育を大切にしています。

レッジョエミリア教育の特徴

次にレッジョエミリア教育の活動の特徴について紹介します。

子どもの創造性を育む開けた教育環境

レッジョエミリア教育では、「独自の教育環境」を整備しています。

レッジョエミリア教育を行う教室には壁はなく、アトリエ、お昼寝の部屋、キッチンなど様々なスペースが1つの大きな空間になるように設計されています。

本やパソコンなどの教具も同じ空間に揃えられており、誰でも遊んだり本を読んだりすることもできます。

保育士が常に子ども達を見守る体制ができており、安全な環境でのびのびと過ごせるように工夫されています。

自然や様々なものを教育に利用する

レッジョエミリア教育では、身の回りに存在するあらゆる物を全て教材にしています。

例えば、何か作るときに一般的な材料である画用紙などだけではなく、様々な材質や素材の物を利用します。

公園や道ばたで手に入る石や小枝、植物なども教材として利用します。

針金や壊れてしまった人工物など少し危険な物でも積極的に使用させます。

その他にも、海で拾った貝殻や、虫の声や車の音、すぐに溶けて無くなってしまう雪も立派な教材になります。

子ども達のインスピレーションを育てつつ、身近なものに興味を持って生活することに繋がるように身の回りの物を教材として活用しているのです。

ドキュメンテーションで記録する

レッジョエミリア教育では、「ドキュメンテーション」という物があります。

この「ドキュメンテーション」は子ども達の毎日を記録した物です。

友達や保育士との会話や質問、活動などを記録しており、どのようなことを不思議に思いどのように解決したのかということを、保育士が細かくメモしたり、動画や写真を撮ったりしています。

そのようにして記録した物は、子ども達本人や保護者が理解できるように整理し、まとめられています。

この記録は、ファイルにまとめるだけではなくパネルなどに展示することもありいつでも誰でも見ることが出来ます。

このような、ドキュメンテーションがあることもレッジョエミリア教育の特徴の1つと言えるでしょう。

レッジョエミリア教育を導入するメリット

レッジョエミリア教育を実践すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

メリットを3つにまとめて紹介します。

子どもの興味関心を育成できる

レッジョエミリア教育では、プロジェクト活動があり、プロジェクトの内容によっては、数ヶ月や1年単位で続く場合もあるかもしれません。

1つのテーマに長期的に取り組むことにより、子ども達は自分の好奇心を追求することが出来ます。

このような、プロジェクトに取り組むことにより学ぶことそのものへの興味関心を引き出すことが出来ます。

自主性と協調性を育成できる

レッジョエミリア教育では、4~5人でグループに分かれプロジェクト活動に参加します。プロジェクトでは、保育士が指示を出したりはせず、子ども達がお互いに話し合い、意見を出し合いながら作業を進めていきます。

そのため、プロジェクト活動を通して他の子ども達と話し合い、議論する場が多く設けられます。

このような経験を通じて子ども達は、自主性と協調性を身につけることが出来ます。

交渉力の獲得

プロジェクト活動を行っていく中で、重要になってくるのが交渉力です。

子ども達がお互いに話し合い、意見を出し合いながら作業を進めていくので、プロジェクトの提案の際には自分の企画が取り上げられるように、相手を説得する必要が出てきます。

交渉力が無ければ、自分がやりたいと思った企画を行う事は難しいでしょう。

そのため、子どもはどうしたら他の子ども達に自分の企画が認められるか、提案するときに工夫をするようになるでしょう。

このような経験を繰り返していくことで、交渉力を身につけることが出来ます。

レッジョエミリア教育を行う時のポイント

最後に、レッジョエミリア教育を実践する園で子ども達に援助するときのポイントを紹介します。

子どもの主体性を尊重する

レッジョエミリア教育の理念の1つとしても掲げられている「子どもの権利」を大切にするためにも、まず保育士さんは子ども達の興味関心に合わせた環境を作ったり、提案していくことが重要になってきます。

子どもの達の興味関心に合わせた環境を作ったり、提案していくことで、子ども一人ひとりが「自分で選び」、主体的に活動に関わるチャンスが生まれます。

園によって多少違いはあるかもしれませんが、毎日の保育内容は子ども達の意見を取り入れながら決めています。

決めるときは、どこで何をするか、外ならどこへ行くか、基本的ないくつかの選択肢を用意し、子どもの意見を取り入れながら決定していくことを意識すると良いでしょう。

そして、実際にどうやるのか、今子ども達にとってどんな意味があるのか、どういう配慮が必要なのかを考えて、子ども達の主体性を尊重した援助をしていきましょう。

子どもにとって好奇心を駆り立てる環境を作る

保育園での生活は、子ども達が不思議に思い「もっと知りたい」と自然に思えるような環境を作ることもポイントの1つです。

例えば、植物を観察するとして「どうしてこんな形、色なんだろう」と疑問に思い、それに関して子ども自身が図眼などで調べたりして知識を深めます。

そういったプロセスを自然に生み出せるような魅力的な環境を作ることが大切です。

そのためには、積極的に自然と触れ合う機会を作ったり、園内で様々な動植物を観察・探索出来るように工夫したりすると良いでしょう。

ドキュメンテーションを共有する

日々の子ども達の記録であるドキュメンテーションを職員間で共有することで、どのような保育方法をその保育士が実践しているか等を可視化することが出来ます。

そうすることで、その後の活動に活かすことができるでしょう。

例えば、「A先生はこういった所を重視しているので自分は違う視点から見てみよう」、「B先生はこういうことを実線したことがあるから、今度はより面白いと思えるものを一緒に考えてみよう」といった関わり方も出来るかもしれません。

それぞれの保育士さんの視点を活かしてドキュメンテーションを作り、ミーティングなどで共有して振り返ることで連携も深まり、保育の質の向上に繋がるかもしれません。

まとめ

今回は、レッジョエミリア教育とは何か、成り立ちや教育理念、特徴、導入するメリット、教育を行う際のポイントを紹介しました。

レッジョエミリア教育には、プロジェクト活動やドキュメンテーションなど独自のアプローチ方法があります。子どもの社会性や権利を重んじ、ゆっくりと時間をかけて掘り下げて行く教育スタイルが、子どもの興味関心を引き出し、協調性や自律性を養うことに繋がる大変素晴らしい教育方法であると思います。

そのため、保育士さんには園生活の中で子ども達の社会性や主体性、創造性などを育む援助が求められることでしょう。

レッジョエミリア教育に興味を持った場合は、どのようなものなのかを理解したうえで、実践している園を探すなどしてみるとよいでしょう。

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