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保育士の皆さんこんにちは!保育士クラブ編集部です。
保育士さんが働く場所と言えば保育園が一般的ですが,その他に保育士さんが働くことのできる場所として乳児院という施設があります。
では,乳児院とはいったいどんな施設なのでしょうか?
今回は,乳児院について施設の概要,役割,仕事内容の3つのテーマで紹介していきたいと思います!
乳児院とはどんな施設?
施設の概要
乳児院とは,何らかの事情で保護者の養育を受けられない乳児を預かって養育する施設です。
児童福祉法の37条には次のような言及があります。
厚生労働省による社会福祉施設等調査の概況 総括表(平成30年)によれば,平成30年10月1日現在で乳児院は全国に138施設あり,定員は3813名で在所者数は2869人です。
対象年齢は主に0~2歳で,その後は親元へ帰る,里親の元へ行く,児童養護施設へ行くのが一般的です(必要と判断された場合には2歳以上の子も在所することがあります)。
乳児の在所期間は1か月未満が26%,6か月未満が48%となっており,約半数の乳児が短期で在所しています。
勤務している職員は,主に嘱託医,看護師,個別対応職員,家庭支援専門相談員,栄養士,調理員,保育士などです。(児童福祉施設の職員配置基準による)
保育園との違い
子どもを預かって養育するという点では乳児院は保育園と同じですが,乳児院は24時間体制で子どもの養育を行うという点で保育園と異なります。
また,在所している子どもに複雑な事情を抱えた子が多いという点も通常の保育園との違いと言うことができるでしょう。
職員の数についても,0,1歳の乳幼児1.6人につき看護師(または保育士,児童指導員)1人以上,2歳児2人につき1人以上設置する基準があり,より少人数での養育を行う点も特徴です。
なので,乳児院で働く保育士さんは父親,母親代わりとして家族のように愛情を持って子どもに接する必要がありますね。
乳児院が果たす役割とは?
子どもの養育
乳児院の一番主な役割が,保護者の養育を受けられない子どもを公的な責任で社会的に保護・養育することです。
一時的に家庭の代わりとして子どもを養育し,健全な成長と将来的な自立のために1人1人と愛着・信頼関係を築いて発達を支援することが求められます。
乳幼児の養育は常に命の危険が付きまとい時には緊急的な対応が求められることも多いので,乳児院は24時間体制で手厚い家庭的な養育環境を提供する役割があると言うことができるでしょう。
家族への養育支援
乳児院に入所する子どもには,親が問題を抱えている安心して自分の身を任せられる保護者のいない子どもたちが多くいます。
そうした子どもたちに健全な発達を保障する環境を整えるためには,子どもを保護・養育するだけでなく親の問題の解決を図り家庭としての機能を回復していく必要があります。
乳幼児に「当たり前の生活」を保障するためにも,児童相談所などの他機関と連携した家庭への養育支援(保護者とのカウンセリング・専門性を生かした解決策の提示,資源の提供などの社会的な支援など)は乳児院が担う役割の一つとなります。
入所前から退所後にわたるサポート
乳児院が子どもを保護・養育する理由として最も大きなものが子どもの未来をより開かれたものにすることです。
なので,ただ入所期間中に保護・養育を行うだけではなく退所後に安定した生活を送り社会的な自立につなげていくためにも,家庭・引継ぎを行う施設・里親などと連携した継続的な支援を行うことが求められます。
普通の家庭では父親・母親などの特定の養育者が子どもが成人するまで一貫した保護・教育を行います。
そのことを考えれば,家庭環境に問題のある子どもたちにも入所前から退所後にわたって継続した支援を行いなるべく一貫・安定した養育環境を保障していくことは乳児院の重要な役割だということができるでしょう。
専門的な養育
乳児院には,虐待や保護者との分離を経験して精神的に傷を負った子どもたち,何らかの病気や障害を抱えた子どもたちが多数在所しているので,子どもの状態に応じた保育,医療・療育,心理的なケアを専門的な観点から行っていく必要があります。
様々な問題を持つ子どもたちの健康と安全のために,保育士,医師,看護師,栄養士,個別相談員,心理士などの各方面に精通した方々の連携による手厚い専門的養育を提供することが乳児院の重要な役割の1つとなっています。
乳児院にいる子どもたちについて
子どもの年齢層と特徴
乳児院で生活する子どもは原則として0~2歳の乳幼児で,低年齢児の養育を担うのが乳児院の特徴です。
ただし,「保険上,安定した生活環境の確保その他の理由による特に必要のある場合」には就学前までの入所が可能なので3歳以上の幼児も在所しています。
また,乳児院にいる子どもには入所した時から心身に何らかの問題を抱えている場合が多く,病児・虚弱児・障害児・被虐待児が約半数を占めているといいます。
入所する理由
乳児院に入所する主な理由としては,精神疾患を含めた母親の病気・虐待・ネグレクト・父母の就労・受刑などが挙げられます。
入所する理由は一つに絞れるほど単純なものではなく,複雑でいくつもの要因が重なっていることがほとんどです。
乳児院は児童相談所などの一時保護施設を経由せずに直接入所するので,入所後に虐待やネグレクトなどの問題が新たに判明する場合もことも多くあるようです。
退所する理由
乳児院で生活している子どもたちの次の行き先として最も多かったのが家庭への復帰(乳児院にとどまるケースを除く)です。
乳児院で生活している子どものほとんどには保護者がおり,ショートステイを経て親元へ帰るケースが最も多くなっているようです。
その一方で,年齢満了に伴う児童養護施設や里親などへの措置変更も多くを占めています。
子どもが退所後に行く場所については,子ども自身の状況,親との関係などを考慮したうえで決定が下されます。
全体的に見て,長期入所と短期入所が二極化していることが退所理由から分かるのではないでしょうか。
乳児院で働くには?仕事内容や資格について
では,保育士さんが乳児院で働く場合にはその仕事内容はどのようになっているのでしょうか?
保育園での仕事内容と似ている点と異なる点があるようなので以下で具体的に見ていこうと思います。
また,必要な資格などについても紹介していきます。
仕事内容
乳児の生活全般のサポート
まず主な仕事として挙げられるのが,おむつ替えやミルクなどの乳幼児の生活全般のサポートです。
子どもの生活サポートという点では保育園での仕事と同じですが,乳児院ではこの仕事を24時間体制で行うことになり,基本的には日勤と夜勤で分担制になっているようです。
乳幼児への対応は看護師や医師,保健師,栄養士などの多種多様な職種の方と連携して行うのでその点も乳児院での仕事の特徴となっています。
一日のスケジュール
7:00 起床: 夜勤の方と交代します
8:00 食事: 離乳食やミルクの介助をします
9:00 遊び: 歌や手遊び,お絵描きなどをして遊びます
11:00 食事: 食事の介助をします
12:00 お昼寝: お昼寝中に事務作業を行います
15:00 おやつ: おやつの介助を行います
16:00 遊び・入浴: 遊んだ後は交代で入浴の介助を行います
18:00 食事: 一人一人の状況に応じた食事を提供します
19:00 就寝: この時間に夜勤の方と交代します
※このスケジュールはあくまでも目安です。
※乳幼児一人一人の生活習慣に応じた対応をしていく必要があります。
日中の養育スケジュールは保育園とさほど変わりはありませんが,家庭で行うしつけやマナーなどについても保育士さんが親代わりとなって担当することになります。
また,様々な事情を抱えた子どもたちがいるので一人一人に対してより個別的で丁寧な対応を行っていくことが求められます。
保護者へのサポート
子どもを親元へ返すために,保護者への働きかけを行うのも保育士さんの仕事になります。
保護者が適切な育児を再開できるように相談・アドバイス・ケアなどを行い,子どもが退所して家庭に戻った後にも連絡を取って相談に乗ることもあります。
また,子どもが里親に引き取られた場合には里親には里親家庭へのフォローも行います。
子どものアフターケア
在所中の養育だけではなく,子どもが退所後にも安定して生活を送ることができるようにするためのアフターケアも重要な仕事の一つです。
家庭や里親,児童養護施設へのスムーズな引継ぎを行うために面談に参加して情報共有を行い,適切な退所時期や退所後の生活について検討します。
退所後に子どもが安心できる環境で過ごすことができているかどうかに注意を払い,必要な場合には各家庭や関係機関と連携して相談に乗ったりフォローをすることもあります。
必要な資格は?
乳児院で働くためには,保育士の資格が必須であるところが多いです。
ただ,保育園と比べて施設の数も少なく,より個別的・専門的な対応が求められることも多いので一般的な保育士と比べてややハードルが高いということができそうです。
保育士としての資格に加えて,医療・福祉系の知識や育児の経験などを持つ人であれば選考で即戦力としてアピールすることができて有利です。
ただし,専門的な知識や対応方法などは実際に働いていくうちに身についていくものでもあるので,勉強を欠かさない姿勢があればブランク明けの保育士さんや乳児の養育経験のない方でも働くことは十分に可能です。
乳児院がどのようなところなのかを実際に知るために,実習やボランティアに参加してみるのもいいかもしれませんね。
また,資格やキャリアも重要ですが,乳児院保育士は親に代わって特殊な事情を抱えた子どもの面倒を見る仕事なので,辛抱強く愛着関係を築けるような人柄の良さも重要になってきます。
雇用形態と給料
雇用形態
乳児院の保育士の雇用形態は,正社員,契約社員,派遣社員,パート,など多岐にわたりますが,基本的には正社員が求められているようです。
子どもと家族のような関係性を築いていくことが求められるため,長期間にわたって安定して働いてくれる方が歓迎されます。
また,シフトは基本的に日勤と夜勤の2交代制となりますが,日勤のみを希望する人には向いていない職場だということができます。
日勤だけを選べば,その分他のスタッフへの夜勤の負担が大きくなったり,頻繁にシフトに出られないことによる子どもとの信頼関係への支障も出てくるからです。
つまり,乳児院で働くためにはシフトは2交代制で夜勤ありの正社員になることを念頭に置いておいた方がいいということになります。
給料について
基本的には,月収で平均22~24万円になります。
資格職は職種によって給料が変わりますので,同じ保育士さんであれば保育施設で働く方と比べて同じかやや高いぐらいだということができるでしょう。
ただ,乳児院は国や自治体、社会福祉法人などが施設を運営することが多いため、施設によっては賞与4カ月分以上や、年間休日120日以上、家賃補助などの充実した待遇があります。
賞与・福利厚生については安定して支給される傾向にあるので,一般的な保育士さんと比べてやや高いのはそのためだと思われます。
乳児院で働くことのやりがいと大変なところ
やりがい
乳児院は一般的な保育園とは異なり,保育士1人当たりが養育する子どもの数が少なくなっているため,個別的で手厚い対応が求められます。
担当する子どもには様々な事情を抱えた子がいて緊急的な対応も求められることから,親に代わって子供の面倒を見る責任は重大だということができるでしょう。
ただその反面,子どもと愛着関係を築くことができて笑顔を見せてくれるようになれば,それまでの多くの苦労が報われた気がして達成感を感じることができます。
また様々な困難を抱えた子どもたちや親と関わりサポートする機会が非常に多いので,社会貢献・人助けをしているという実感が湧きやりがいになるでしょう。
大変なところ
やりがいもある一方で,もちろん大変なこともあります。
まず乳児院の保育士さんは子どもの養育,保護者への働きかけ,アフターケアなど抱える仕事の種類も多く,責任はとても重大です。
精神的な傷を負った子ども,病気・障害を抱えた子どものお世話をすることも多いので保育士さんの精神的な負担もかなり大きなものになるでしょう。
また,勤務も24時間体制であるため,夜勤や休日勤務もあり保育園で働くのに比べてかなり特殊な働き方で仕事はとてもハードです。
想定外の事態が起こり,勤務時間が延びることもあります。
自分のプライベートを犠牲にしてでも困っている子どもや保護者のために尽力できる責任感・体力・精神力のある方であれば大変な部分もやりがいとして感じられるかもしれませんね。
乳児院保育士の求人はどうやって見つけるの?
では,乳児院保育士の求人はどうやって見つければいいのでしょうか?
乳児院は2019年時点で全国に138か所しかないため,求人の数自体は少なくなっています。
ただ,近年乳児院の数は増加傾向にあり,共働き家庭・女性の社会進出・未婚の母や離婚も増えているため、乳児院で働く保育士の需要は今後も変わらずにあるということができそうです。
もし乳児院保育士の求人が見つかりにくければ,施設のホームページを確認したり保育士専門の求人サイトの利用,キャリアコンサルタントへの相談を行い自分が働けそうな環境を見つけるのがいいかもしれません。
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まとめ
今回は,乳児院とはどんな施設なのかということを概要,役割,仕事内容などを見ていくことで紹介してきました。
乳児院は様々な問題を抱えた子どもや保護者をサポートする役割を担う施設で,医師,看護師,栄養士,個別相談員,保育士,心理士,個別相談員などの様々な職種の方々が連携して仕事に当たっているということがわかりました。
責任が重くかなりの負担を強いられる仕事ですが,同時にやりがいもかなりある仕事なので保育士の資格を生かして働くことを検討してみてもいいかもしれませんね。
この機会に乳児院に対する理解を深めてみてはいかがでしょうか?