第2回保育ジャーナル 東京都中野区「金の峰幼稚園」理事長 久末喜代美先生にインタビューしました

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東京都中野区にある宗教法人東福寺付属金の峰幼稚園理事長 久末喜代美先生にインタビューさせていただきました。
昭和30年5月4日に設立された金の峯幼稚園は、緑多く、四季折々の花が咲き乱れる環境の中で、建学の精神を大切に、お子様がのびのびと個性豊かに育つお手伝いをされています。

今回は理事長先生に、幼稚園教諭を目指す方へのメッセージを中心に、インタビューさせていただきました。

宗教法人東福寺付属の金の峯幼稚園は、昭和30年5月に初代園長安藤文治和尚によって創立開園された、大変歴史の深い、由緒あるお寺の寺子屋として始まりました。お寺の境内と隣接した園は、緑も多く、冬は暖かく夏涼しい、都心の幼稚園としては恵まれた環境が特徴です。今年3月にリニューアルされたばかりの園舎は、遊戯室、保育室、保健室、職員室など広々と設計され、室内遊びの増えた今の時代に対応できる環境となっています。



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-園の教育方針を教えてください

1、思いやりのある子、やさしい子の育成
1、体力づくりと心身の発達の助長
1、3才、4才、5才児の和を大切にしての縦割り保育

以上を教育目標に幼児を育て、将来立派な社会人として成長していくための土台作りを目指しています。
「教えるだけの教育」ではなく「主体性のある教育」を目指し、子どもの自主性を大切にすることを心がけています。
子どもは環境から得るものが多く、園の環境によって左右されることが多いです。
子ども同士の友達関係・先生と園児とのの信頼関係など、関係の中から成長していくもの。
「お互いに育ちあう」ことができる環境を作ってあげられるようにように努めています。






1.JPG-都心の園ならではのご苦労もあると思います

2階の理事長室からもたくさんの緑の木々が見えます。都心に近い場所ですが、比較的緑が多い点は恵まれています。
園児たちは徒歩通園をしていますので、歩いて通ってくる時の安全確保や交通指導、不審者対策などに注意しています。

安全対策は園だけの努力では成り立ちません。地域の警察・消防・自治体や保護者の連携で始めて対応できるのです。
地域全体の協力をいただくように話し合いなどを日々進めています。徒歩通園ということで保護者の方と園の関係が比較的近いので、毎日親御さんとコミュニケーションをとり、細かく情報交換などしています。その点では助かります。
最近、東日本大震災で被災された幼稚園の園長先生の体験談をお聞したことで、特に防災訓練には力が入りました。




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-金の峯幼稚園さんは毎年多くの実習生や新卒職員を受け入れいていらっしゃるようですが 幼稚園教諭の人材育成についてお聞かせください

毎年3~4名の新人職員を受け入れています。その他にも実習学生も年々人数が増えて、今年は8名程度の予定です。
正直に申し上げると、実習生の受け入れは、園の負担となります。ただ、年々志望者が減っている中で「幼稚園教諭になりたい」という志のある方の力になりたいという気持ちが強いので、希望者はお断りしないようにしています。




-育成の方針などはあるのでしょうか?

園になじむことが第一ですね。園風を理解して、職員の和に加わってもらえるような環境を作っています。
疑問をためずに、どんどん質問してもらえるよう「無口にさせない環境づくり」を心がけています。

新人期間中は研修会が数多くあるので、大変だと思います。
当園は仏教園ですので、その関係の研修会なども含めると、月に1から2回は必ず参加してもらいます。

新人さんは最初のうちは「頭でっかち」になりがち。学校で学んだ知識をいっぺんに出したがりますが、まずは基本的な社会人として、学校では覚えられない教養を身につけるよう指導しています。幼稚園は朝が早く体力勝負です。体力づくりや健康管理などの自己管理ができなければ、子どもやクラスの管理はできませんからね。

入職して最初の1年は副担任として、担任の補佐からはじめます。最初の1年は養成機関ですね。
その後 本人の努力次第で担任になったりと責任が増えていきますが、人間的な成長がなければ、子ども達が駆け寄ってくるような先生にはなれません。本人の努力しだいでやりがいのある仕事になると思います。


-子育て支援における幼稚園の役割が変化し、幼保一元化という言葉を耳にすることも増えました

色々考えがあると思いますが、成り立ちがまったくちがいますので一概には結論付けられないでしょう。
お母さんの就業率が高いことなどから、行政や自治体からの指導もずいぶん増えてきました。中野区では夏15日・冬4日・春5日以上の預かりを指導されていますが、園児の7割以上から希望されています。

当園では、10年以上前から「預かり保育」も対応していますが、預かり保育のきっかけは、遊び場の減った子ども達に遊び場を提供するために園庭を開放し、遊ばせている子どもを管理が必要になったことからです。そのように保育園も幼稚園も、時代に応じて、現場はそれぞれ対応していくでしょう。保育園と幼稚園の在り方の前に『子どもにとって何が幸せか』という問題が軽視されてるうちは結論を出すべきではないです。子どもを預けて就業できる環境を作るべきか、数年は育児に専念できる環境を作るべきか、それはどちらが子どもの幸せとなるのかという視点から考えてほしいです。そこを含めない議論はすすまないでしょう。保育園・幼稚園・保護者 全ての要求が噛み合うことはありませんからね。


-子どもの遊ぶ環境など変化していると思うがどのような対策をされていますか?IMG_0155.jpg


今年の夏は大変暑かったです。去年まで冷房を入れず、自然風ですごしていたんですが、今年はさすがに冷房を入れ、暑い日には部屋にいれるようにしました来は、自然の風で外遊びなどをさせたいのですが、実際の家庭環境とかけ離れても、子ども達への負担が大きくなってしまいますので、家庭環境とかけ離れない程度に、暑いときは部屋遊び、などと柔軟に対応するように注意しています。


-これから幼稚園教諭・保育士を目指す人へのアドバイスがあればお聞かせください


「好きである」の一言につきます。 「子どもが好き」だけではできません。仕事として子どもに携わることに喜びを見出して「好き」になって欲しいです。最近は志望者が減ってきているようですが、心から「幼稚園教諭になりたい」と思う人が集まっていると感じます。その気持ちをもって、「仕事を好き」になって欲しいです。新人の育成は正直大変なことも多いですが、出来る限り後進に道を開けるよう、力になれればと思っています。





久末喜代美 理事長 



宗教法人東福寺付属の金の峯幼稚園 

設立  昭和30年 5月 4日
園長  安藤 文隆
住所  〒165-0022 東京都中野区江古田3丁目9番9号

 金の峯幼稚園ホームページ 








お邪魔した日は、運動会を前日に控え、ちょうど行進の練習中でした。窓から園児達の大きな声が響くなかインタビューを始めました。理事長の気さくお人柄か、開始時からすぐに、たくさんの記事には書けないような(!)楽しいお話しも聞かせていただきました。最近のお弁当に対して「お弁当は見た目より中身が大事なんです!」というメッセージ!ぜひ参考にさせていただきます。

取材・文:深代ひろ子 撮影:田渕祐史(撮影日 平成23年9月29日)